欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
「書くに堪えない暴言が逆側で」久保建英への“人種差別ヤジ”現場で何が…撮影取材で見た背景「簡単に言い表せないけど」スペイン人も寂しそうに
text by
中島大介Daisuke Nakashima
photograph byDaisuke Nakashima
posted2025/01/25 17:00
バレンシアの本拠メスタージャで“人種差別的ヤジ”を浴びた久保建英。現場で撮影するカメラマンが見聞きしたリアルとは
当時バレンシア主将のパレホに遅れを取ったことが思い返されるが、直近のビジャレアル戦では、そのパレホを吹っ飛ばしてのゴラッソを決めており、久保の成長度合いを感じられた。
この試合、久保のサブスタートはあらかた予想できたものだった。サブメンバーとしてアップに臨む姿からは、ややリラックスしながらボールと触れ合う様子が見られていた。またベンチでも、談笑しながら戦況を見つめる姿を撮影できたが、試合展開と共に徐々にヒートアップする様子もあった。
試合について簡潔に振り返る。ソシエダは、通常とは違う3-5-2の布陣を取った。主力を欠く中で守備に枚数をかけ、快足のベッカーと新加入20歳のオスカルソンが2トップに入った。そのベッカーの抜け出しから、オスカルソンが決定機を迎えた場面もあったが、シュートを枠に飛ばすことができず。前半26分に、守備ラインでの軽率なミスからウーゴ・ドゥロに先制点を奪われる。
久保にボールが入るたび「ヤツに気をつけろ」
ADVERTISEMENT
指揮官は、前半のうちにオラサガスティとバレネチェアにアップの指示を出したが、久保に声はかからず。後半頭よりオラサガスティを投入し、4バックに戻したソシエダは、徐々に主導権を握り始める。バレネチェアの交代が準備されるとともに、久保にも急遽アップを早める声がかかり、後半17分、バレネチェアと同時交代でピッチインした。
右サイドに入った久保は積極的にボールを要求し、攻撃の起点であろうとした。終盤のソシエダ猛攻時には、久保にボールが入るたびに観客席から「Cuidado(ヤツに気をつけろ)」というような、悲鳴にも似たヤジが飛んでいた。
ただ相対したバレンシア主将ホセ・ルイス・ガヤの気迫のこもった、そして時に反則スレスレの激しいタックルにボールを奪われる場面もあり、反撃の狼煙を上げるまでには至らなかった。最終盤のアディショナルタイムには、CKの流れからボックス内の久保がダイレクトシュートを放ったが、GK正面に飛んだシュートは難なくキャッチされ、悔しさを露わにしていた。
久保に対する人種差別的暴言、撮影場所で見たリアル
この試合を語る上で避けては通れない事象は、冒頭でも触れた、久保へと向けられた観客席からのアジア人差別だった。
後半開始直後、久保らサブメンバーがアップゾーンに向かった時だった。書くに堪えないアジア人蔑視の暴言が飛んだ。