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スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
「緊張で眠れず、低体温症になったランナー」箱根駅伝、名門復活のウラ側…中央大・藤原正和監督が明かす“誤算”「青学大・野村君の56分台は想定外でした」
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKiichi Matsumoto
posted2025/01/24 11:10
まさかのシード落ちから1年……往路2位、総合5位と見事に復活を遂げた中大。アンカー藤田大智(2年)を笑顔で迎える
「ラッキーだったのは、駿恭が飛び出した後、誰も追いかけてこないことでした。これで2区の溜池(一太)がつなぎ、3区の本間(颯)が本来の実力を発揮してくれて区間賞を取ってくれました。4区で白川(陽大)が青学の太田(蒼生)君に詰められ、5区では園木(大斗)が逆転されましたが、往路は100点満点の走りでした」
ひとつ、疑問をぶつけてみた。山上りの園木は前半突っ込み、上りに入ってから苦しい表情を見せていたので、「体調が悪いのではないか?」と心配になったのだが、実際はどうだったのか。
「あれは園木のいつもの走りなので、心配なかったです(笑)。前半に突っ込んだのもプラン通りでした。首位を守るんだったら、攻める。園木は、その通りの走りを見せてくれました。ただ、青学大の若林(宏樹)君は推進力が違いましたね」
低体温症も…「緊張で眠れなかったようです」
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往路を終えて、トップの青山学院大との差は1分47秒。6区で差を詰めれば、展開としては面白くなる。
「私のプランとしては、6区の浦田(優斗)が青学の野村(昭夢)君とトントン、7区の岡田(開成)、8区の佐藤(大介)で1分ずつ詰められれば――という思惑でした。実際には、野村君の56分台は想定できなかったですね。あの走りを見せられては2位確保に照準を切り替えざるを得ませんでした」
しかし、ここから中大は苦戦を強いられる。期待の岡田は、洛南高時代の先輩である駒大の佐藤圭汰にかわされ、3位に後退。そして8区の佐藤は低体温症となって区間20位。総合6位に後退し、11位の帝京大との差も2分ほどとなり、シード権ラインを意識せざるを得なくなってしまった。
「佐藤はレースの数日前から緊張で、あまり眠れなかったようです。アップのタイミングもいつもとは違い、体が冷えたのかと……。結果的に3位表彰台を逃したのは、8区が影響しましたから、佐藤には『4年生の主務にメダルをかけてあげられなかったのは、君の責任でもある。それを肝に銘じて競技に臨んで欲しい』と話しまして、佐藤は泣いていました。来年度は頑張ってくれるはずです」
首筋が寒くなってくる状況で、9区の吉中祐太(3年)が踏ん張り、いよいよアンカーへ。
実は10区のランナーを、レース前日まで藤原監督は決めることができなかった。
<続く>