- #1
- #2
スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
「緊張で眠れず、低体温症になったランナー」箱根駅伝、名門復活のウラ側…中央大・藤原正和監督が明かす“誤算”「青学大・野村君の56分台は想定外でした」
posted2025/01/24 11:10
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Kiichi Matsumoto
◆◆◆
中央大学の藤原正和監督にとって、一昨年の末、クリスマスを過ぎてからは「地獄」だった。
「前回の箱根駅伝は優勝を狙える布陣でした。ところが、クリスマスから年末にかけて毎朝、私のLINEに選手からの体調不良の連絡が入ってきて……。その経験があったので、今年も自宅から合宿所に向かう通勤時間に、選手から発熱したとか、不吉な連絡が来るんじゃないかと気が気ではありませんでした」
ADVERTISEMENT
前回は13位。そして今季に入っても11月に行われた全日本大学駅伝でシード権を逃し、名門・中大としては今回の箱根で流れを変える必要があった。
「いったい何を見せられてるんだ(笑)」
そして、1区から流れは変わった。
吉居駿恭(3年)がスタートからわずか300mを過ぎた時点で飛び出し、独走状態になったのだ。
「ペースが遅かったら、駿恭は行くだろうと思ってましたが、想像以上に早いタイミングでした。それにしても、良い走りでしたね。お兄ちゃんの吉居大和が区間新をマークした2022年のタイムと比較すると、最初の5kmと15km以降は駿恭の方が速く、大和は5kmから15kmまでが速かった。その意味で駿恭は後半、よく粘りました」
運営管理車からは藤原監督の「絞り出せ!」という声が響いたが、それは兄の記録を超えさせるための激励だった。吉居駿恭が区間賞を獲得すると、テレビ中継では大和と駿恭の掛け合いがあり、藤原監督も運営管理車のなかでこの中継を見た。
「我々としては、いったい何を見せられてるんだと思いました(笑)。駿恭は、大和と話すときは敬語なんか使わないのに、『敬語使った方がいいですか?』とか質問してて」
「往路は100点満点でした」
こうして吉居駿恭が「厄落とし」に成功し、中大は往路の主導権を握る。