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「ワシはもう死んだものと思ってくれ…」“高校サッカー最大の誤審”はなぜ起きたか? 作陽・青山敏弘のVゴールを見逃した審判の苦悩22年
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2025/01/20 11:01
22年前の資料を手に、のちに「誤審」と認められた作陽vs水島工業戦を振り返った青木隆さん(66歳)
事態を重く見た日本サッカー協会(以下、JFA)は、一連のシーンが誤審だったことを認めた。一方で誤審を理由とした再試合は実施せず、試合が成立している以上、結果は覆らないと表明。その上で、青木に3カ月間の謹慎処分を下した。
JFAが誤審とリリースする異例の事態。青木は謝罪の想いすらも胸の内に封じ込めてきた。
「私が自分の罪滅ぼしのために謝罪やコメントをしたとしても、彼らは幸せにならないどころか、より事態を悪い方向に向けてしまうかもしれない。それによって傷ついた人たちをさらに傷つけたり、傷つかなくていい人を傷つけたりしてしまうと思っていました。私が言われるのは、私がやってしまったことなので、もう仕方がないんです。それよりも両校の選手たちに対する申し訳ない気持ちの方が強かった。あれは間違いなく私のジャッジが間違っていた」
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辞めちまえと何度言われたことか。ただ、青木は審判を辞めなかった。
「私がやるべきなのは自分が楽になろうとか、サッカー界から逃げようとか、そういう保身ではなく、逆にサッカー界のためにやっていこうということでした」
〈つづく〉
◆第2回では、審判を辞めなかった理由、そしてキャリアを支えてくれた青山敏弘への想いを明かしている。