「ワシはもう死んだものと思ってくれ…」“高校サッカー最大の誤審”はなぜ起きたか？ 作陽・青山敏弘のVゴールを見逃した審判の苦悩22年 

「今のはゴールだろ！」
「なんで試合が続いているんだ！」

　スタンドから罵声が聞こえる。

　殊勲の青山はベンチ前から動こうとせず、顔を真っ赤にして叫んでいた。

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「（試合は）終わり！ 俺たちが勝ったんだ！」

　野村雅之監督が当時のことを教えてくれた。

　野村監督はベンチ脇で治療する選手を気にかけながら戦況を見守っていた。シュートから判定まであまりの一瞬の出来事で、実はこのシーンのジャッジを自身では判断しかねていた。

　ただ、試合は続行している。監督として青山を叱り飛ばした。

「戻れ！ いいから戻れ！」

　野村監督は青山の腕を引っ張り、強引にピッチに戻した。

野村監督が保管していた当時の新聞記事（2002年11月14日朝日新聞）

PK戦で水島工業が勝利

　ゴールを認めなかった主審・青木は、あのシーンをこう振り返る。

「青山選手のシュートが左ポストに当たったあと、（奥の内ポストではなく）右のポストに当たってピッチに戻ったと思ったんです。その後、会場全体がざわついていたのは分かったのですが、私の中でその認識でした」

　当時の競技規則では明らかな間違いが判明したとしても、最終決定権は主審にあった。

　そのまま試合は進み、PK戦までもつれた末に水島工業が選手権出場の切符を手にする。スタジアムを異様な空気が包み込んでいた。

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