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プロ野球PRESSBACK NUMBER
日本一の瞬間「亡くなった女房が降りてきて…」DeNA初代監督・中畑清が日本シリーズ解説で涙したわけ「こんな景色が見られるときが来たんだと」
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byKeiji Ishikawa
posted2024/12/11 11:00
DeNA初代監督・中畑清が愛情をこめて語る日本シリーズ優勝。熱いぜ!
——教え子と言えばやはり筒香選手。2回裏、ホークスのエース有原航平投手の4球目、チェンジアップを捉えてバックスクリーン右に飛び込む先制ソロを放ちます。「あの方向にホームランが出れば、彼本来のバッティング」と中畑さんも納得の一発でした。
中畑 左バッターが引っ張って右中間という打球は、絵に描いたように美しいんだよね。逆方向におっつけたりするのももちろん彼のテクニックにはあるんだけど、一番かっこいい筒香の姿はあの方向へのホームランなんだよ。あの軌道を見ながらそれを思い出したから、ああいうコメントになった。
アイツは若いときからとにかくうまかった。大人びたバッティングっていうかな。俺は真っ直ぐに滅法強くて変化球にはからきしダメで。そのパターンがまあ普通なんだけど、筒香は逆だったんだよな。だから速いボールに対して振り負けないスイング、タイミングを自分のものにしなきゃいけなかった。始動を早くして“いつでもいらっしゃい”と、相手投手に分からせてやらないと怖さを与えられないぞ、とは伝えていたし、バットマンはどこに何を投げられても全部打ち返せないようじゃないとダメだから。実際、自分のスイング、タイミングを見つけて素晴らしいバットマンになったし、大事な試合で勝ち試合をつくるっていう一番の仕事をしてくれたと思うよ。
松井の振る舞いを筒香に学んでほしくて
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——中畑さんは2015年シーズン、キャプテンに指名しています。本人の成長を促す意味があった、と以前にうかがいました。
中畑 口下手で、(リーダーシップを発揮するのは)苦手なことだったかもしれない。「僕はキャプテンできません」って言っていたくらいだったから。ならば背中で引っ張るキャプテンになればいい。キャプテンをやることで人間的にも成長したよね。2015年の春季キャンプに、日本を代表する四番バッターになるための自覚とか立ち振る舞いを学んでほしいと思って、ゴジラ(松井秀喜)に来てもらった。何を学べたかと本人に聞いたら「存在感、オーラが違います」と返してきて、いいところに気がついてくれたなって。傷だらけのローラじゃないよ、オーラだよ(笑)。
今回、勝ちたい気持ちっていうのは誰よりも強かったはず。勝てないチームにずっといて、その喜びを感じることなくアメリカに渡って、悔しい気持ちを抱いて日本に帰ってきて。チームへの思いも強いなかで、人間的に成長したアイツがああやって日本シリーズの流れのど真ん中に立って活躍できたっていうのは嬉しいことだよ。

