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プロ野球PRESSBACK NUMBER
日本一の瞬間「亡くなった女房が降りてきて…」DeNA初代監督・中畑清が日本シリーズ解説で涙したわけ「こんな景色が見られるときが来たんだと」
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byKeiji Ishikawa
posted2024/12/11 11:00
DeNA初代監督・中畑清が愛情をこめて語る日本シリーズ優勝。熱いぜ!
亡くなった女房が…
中畑 本当のことを言うと、亡くなった女房が目の前に降りてきたんだよ。この景色を見せてあげたかったなと思ったら、一気にこみ上げてきちゃってな。俺が監督のころは(優勝を)想像もしてなかったし、監督がそんなこと思っちゃいけないんだけど、それくらい割り切って戦っていたところはあったから。
ああ、こんないい景色が見られるときが来たんだという喜び、感動……いろんなものが入り混じった表現できない感情だったね。目の前で筒香(嘉智)が大舞台で打ってさ、何て言ったってあんなに不器用だったクワマン(桑原将志)が日本シリーズのMVPを獲っちゃうんだから、いろんな夢が重なった日でもあったよ。
桑原は泣きながらバットを持ち上げていた
——桑原選手のことで言うと、1回裏にヘッドスライディングで出塁しました。「ギリギリのプレーが勢いをつける」と解説して、その回こそ点は取れなかったにせよ実際チームに勢いが生まれています。
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中畑 大舞台で開き直れるっていうのはアイツの持っている良さだよね。怖いものなんてないっていう精神的な強さ。これって教えられるもんじゃないから。アイツ、自分で演出してんじゃないかっていうくらい、このシリーズを通していいプレーを見せつけてくれたよ。ここで見せつけたら最高だっていうことを分かってる(笑)。円陣を組んでリーダーシップを取って声を掛ける自覚もそうだけど、自分に自信がなかったらできないよ。
——桑原選手は中畑監督の1年目に入ってきた選手。「泣きながらバットを振っていた、一番振り込んだ選手」とも解説の席で語っています。
中畑 これ以上振れないって言って、上がってこなかったんだ、バットが。持ち上げることができなかった。それを泣きながらね、クワマンは“この野郎、チキショー”ってバットを地面に叩きつけるんだよ。振れないからバットを持ち上げても、落とすことしかできない。
限界を超えたところの練習量を、あの姿を見ていたから、こいつにはいい選手になってもらいたいってずっと思っていた。あの涙にはウソがなかった。練習にウソはなかった。それをクワマン自身がしっかりと証明してくれたよね。


