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プロ野球PRESSBACK NUMBER
日本一の瞬間「亡くなった女房が降りてきて…」DeNA初代監督・中畑清が日本シリーズ解説で涙したわけ「こんな景色が見られるときが来たんだと」
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byKeiji Ishikawa
posted2024/12/11 11:00
DeNA初代監督・中畑清が愛情をこめて語る日本シリーズ優勝。熱いぜ!
——2連敗からスタートして敵地で3連勝。王手を掛けてハマスタに戻ってくるシナリオはどうでしたか?
中畑 いや、考えられないよ。みんなそう思っていたでしょ。2試合終わって、ソフトバンクは日本シリーズ14連勝なんだから。もう要塞だよ。それが第3戦、東(克樹)が10安打されながらも1失点に抑えてみんなで牙城を崩したわけよ。粘って、あきらめることなく戦って。俺がベイスターズで目指した野球がそこにはあったね。15連勝を阻んだことでチームが変わった。
やっぱり素晴らしかったのは、三浦(大輔)監督の采配でしょ。ピッチャー交代のタイミングは完璧だったし、調子の良い選手を優先する起用法もズバリ当たったよね。大輔自身も開き直れたんじゃない? シーズン中はどこか重たい空気を感じたけど、CSやこの日本シリーズは動くべきところは積極的に動いて、選手たちを“あきらめないぞ”“行けるぞ”という雰囲気に持っていったからね。表情も違っていたよ。
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チーム全体で戦うという空気をつくりだして、その緊張感を持続させるのは難しい。勝ち試合をつくらないと、そういうものは出てこないから。今回のベイスターズはそれができていたよね。
大輔の覚悟がみんなに伝わっていた
——三浦監督自身も、変わっていった、と。
中畑 そうそう。大輔の覚悟が選手、スタッフにも伝わっていたんじゃないかな。監督が迷うと、選手も敏感に感じ取るものだし、そうなったら勝ち試合はつくれない。この日本シリーズは迷いのない、彼の行動、采配によって“ヨッシャ、ヨッシャ”みたいになった。表情や振る舞いを見ても、おそらく大輔自身が自分を変えていったと思うし、今回の下剋上日本一によって、セオリーを越えた自分の感覚みたいなものを何かつかめたようにも感じるよ。
日本一になったことで来年はかなり警戒されるだろうから、苦しいシーズンになるとは思う。でも結果を出したら、本物の名監督になれる。だから来年こそが勝負。大輔ならやってくれるんじゃないかな。
〈後編に続く〉

