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メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
「イライラさせる質問かもしれません…」“批判だらけ“の記者会見、ドジャース・ロバーツ監督はニヤリと笑った…低評価「ロバーツはポストシーズンに弱い」を大谷翔平と変えるまで
text by
田中仰Aogu Tanaka
photograph byKYODO
posted2024/11/29 11:04
リーグ優勝直後、デーブ・ロバーツ監督(52歳)の頭からビールをかける大谷翔平
会見を終え、再び後方の扉へ向かう。パイプ椅子に座っていた旧知と見られる数人の記者の肩をポンと叩き、去り際に“Thanks guys”と言い残す。この1敗がまるで「最善の1敗」であると確信しているかのようですらあった。
ロバーツの会見対応はどことなく演技がかっている。時折、知り合いの記者を名前で呼ぶ。その雰囲気は、さながら小規模な講演会のように見えることもあった。厳しい質問に対してもほとんどの場合、前向きな発言となって回答を終える。
「イラだたせる質問かもしれません…」
こうしたメディア対応はどのように学んだのか。そのヒントとなる言葉が本人から発せられたのは、リーグ優勝決定シリーズ第6戦前日のことだった。
じつはこのとき、アメリカでロバーツに対する批判が高まっていた。発端は第5戦の采配だ。先発したジャック・フラハティ3回8失点の大乱調だった。その彼を、なぜすぐに交代させなかったのか。試合を捨てていたのではないか。米誌『スポーツ・イラストレイテッド』でも厳しい論調の記事が出た。「1-3の場面でフラハティを代えられた。だがロバーツは何もせずにフラハティを続投させ、最終的にメッツが8点を取るまで代えなかった。その段階ではすでに勝利は手の届かないところにあった」。
猛批判を浴びていることは当然知っていたであろう。それでもロバーツは、いつもと同じようにパーカーのマフポケットに手を突っ込みながら、会見場に姿を現した。
ある記者が「質問が2つあります」と前置きしてロバーツに問う。
「少しイラだたせる質問かもしれません……」
質問した記者に視線が集まる。
「オオタニが投げる可能性はありますか?」
するとロバーツは笑みを浮かべ、記者の反応を弄ぶように、少し間を置いて答えた。
「その可能性は、ないね。質問してくれてありがとう」
それに対する記者の「これで日本のテレビに映るかな……」という発言に場が沸く。
「不安、葛藤、失敗…」ロバーツの本心
核心はこの次。同じ記者による2つ目の質問だ。大谷の登板可能性をめぐる質疑応答でロバーツも緊張が解けたのだろう。