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今だから明かす“日本シリーズ指笛騒動”“9月の不調”…DeNA東克樹・独占インタビュー「勝ち星より大事なもの」「3年やってこそ」のエース哲学
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byNanae Suzuki
posted2024/11/18 11:04
日本シリーズ第3戦、連敗スタートからの流れを変える力投を見せた東
今季はレギュラーシーズンではリーグ最多の183イニングを投げ切った。東にとってキャリアハイであり(過去最多は2023年の172.1イニング)、近代野球において200イニングに迫る投球回数は、賞賛に値すると言ってもいい。
「その点に関してはすごく満足していますし、平均で1試合7イニングぐらいいったのかな。僕としては先発の役割を十分に果たせたと思います」
思えば、今季も苦しい運用となってしまった先発の後を受けるリリーフ陣であったが、イニングを稼げる東の存在がなかったらさらに窮地に追い込まれていたことだろう。先発としての矜持を、東は体現した。
試合を作ることに特化しよう、と
他にも気にしていた数字は“K/BB”だったという。K/BBは、奪三振と与四球の比率で、投手の制球力を示す指標だ。一般的には3.5を超えると優秀と言われているが、東は今季、5.19という高い数値を残している。四球が少なく、ここぞという場面で三振が取れる。そんなシーンを今季幾度となく見てきた。
とにかく東の優れた点は、安定して試合を作れるところだろう。ランナーを出しても、要所で抑え、相手にリズムを渡さない。2018年の新人王を獲得したときのような150キロを超える圧巻のストレートはもうない。トミー・ジョン手術を経て、球速のアベレージは145キロと落ちたが、ベース盤の上で強い球威のあるストレートと、チェンジアップやスライダーを制球よく巧みに組み合わせる安定した投球術は、見る者を唸らせた。調子の波が乱高下しないところが東の最大の武器だ。
「調子がいい日も悪い日も当然あるんですが、その日のコンディションの中でいかにやっていくのかを考えていましたね。僕は打者を圧倒するようなタイプじゃないんで、試合を作ることに特化しようって。そこは僕は僕なりのスタイルがあっていいと思っているんで」
今永とバウアーが抜けて
試合を作る意味でも、もちろんQSにもこだわりはある。
「やっぱりベイスターズの打線は強力だと思うので、しっかりQSできれば試合になるのかなとは思いながら投げてきました」
ではメンタルはどうか。昨季、チームにいた今永昇太とトレバー・バウアーが抜け、東に掛かる期待は過去最大のものとなった。そう問うと、東は落ち着いた口調で言った。