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“先輩と妻”に救われたFW「やっていける気せんわ…」「日本、帰んなよ!」ドイツで町野修斗が愛されるまで「自分の知っているドイツ語を」
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byJurgen Fromme-firo sportphoto/Getty Images
posted2024/11/08 11:05
ドイツ移籍当初は苦しんでいた町野修斗の海外生活、支えたのは先輩と妻だった
「オマエは本当に日本で育ったのか? 違うだろ!!」
実は町野は海外でやっていくのにふさわしいキャラクターである。そのことを周囲が理解してくれた。そこからはもう、悩まなかった。
2月以降の15試合で、スタメンを外れたのは第32節と昇格決定後の最終節だけ。その間に記録した3ゴール4アシストを含めて、町野にとっては小さくない意味を持っていた。
僕はドイツ語話せません! でも…
だから、クラブ史上初めての1部昇格を祝う記念パーティでの町野は心から喜べたのかもしれない。
あの日、マイクを握った町野は街の主役になった。
「キャプテンのルイス・ホルトビー(元ドイツ代表で内田篤人のシャルケ時代の同僚)などが話をしていき、話し終わると、誰かにマイクを渡す感じだったんです。監督が話し終わると、僕にマイクを渡してきたので、正直ビックリして。窮地に立たされ『何をしゃべろう?』ととっさに考え、あのフレーズが出てきました。自分の知っているドイツ語を最大限使った感じで……」
〈Hallo! Ich spreche nicht Deutsch. Aber egal!! Holstein Kiel!!!(コール&レスポンスを挟んでから) Holstein Kiel!!!〉
日本語に訳すと、こうなる。
「こんにちはー! 僕はドイツ語、話せません。でも、そんなの関係ねぇ!! ホルシュタイン・キール!!! ホルシュタイン・キール!!!」
まるで、“本家”の小島よしおを凌駕するようなマイクパフォーマンスだった。ただ、町野はこう釘をさす。
「SNSなどで『すごいコミュ力だ!!』みたいに言われましたけど、あの状況やったら、やるしかなかった。『あまりすごくないよ』というのは伝えたいです」
余裕のなさは、過去のものになったのかもしれない
第1回で紹介したコスタリカ戦の翌日に声を出した瞬間についても、こう振り返っている。
「アップが終わってからの本格的な練習に入っていくってなると、僕はあまり話さなくなるんです。湘南のときから、そういう(戦術面の)練習になると集中してしまい、話している余裕がなかったりもしていて」
ただ、町野の“余裕のなさ”も過去のものになったのかもしれない。
その理由とは……。実は、今シーズンに入ってから町野がピッチ上で日に日に存在感を増している秘密とも関係している。
〈つづく〉