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「完敗じゃないですよ」DeNA三浦大輔監督は記者の質問を遮り…日本シリーズ初戦“完敗ムード”の中で「ベンチに諦めムードがあったのでは…」
posted2024/10/27 12:50
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Hideki Sugiyama
横浜スタジアムが唯一、盛り上がったのは、最後の最後だけだった。
日本シリーズ第1戦。2回にソフトバンクが2点を先制し、その後は淡々とした投手戦が続いた。そして9回にソフトバンクに3点が入り5点差となった時点で、スタンドでは席を立つブルーのユニフォーム姿のファンがあちこちで見え始めた。
しかしDeNA打線が意地を見せたのは、最後の最後の9回の攻撃だった。
ソフトバンクの守護神、ロベルト・オスナ投手に襲いかかり先頭のタイラー・オースティン内野手が左翼越えの二塁打で出塁すると、2死から梶原昂希外野手が中前タイムリー。さらに2死二塁から森敬斗内野手が左前適時打で2点目。代打・筒香嘉智外野手が右前に弾き返して一、三塁となるとスタンドのボルテージが一気に上昇する。そして1番・桑原将志のボテボテのゴロを捕ったオスナが一塁に悪送球して2点差まで迫り、なお一、三塁までこぎつけた。
結局、最後は牧秀悟内野手がセンターライナーに倒れて万事休す。それでも9回の攻撃までは、チャンスらしいチャンスもないまま抑えこまれていたDeNA打線の奮起は、改めて日本シリーズでは、最後まで何が起こるかわからないことを教えてくれるものだった。
試合後の監督会見。
9回の攻撃を迎えるまでは完敗ムードの中で……という記者の質問を遮るように三浦大輔監督はこうまくし立てた。
「完敗じゃないですよ。(9回の攻撃が終わるまでは)負けてないですから、まだ試合が終わっていない。まだまだゲームセットじゃないですから。攻撃を1イニング残していましたから“いくぞ!”と。落ち込む必要もない。ゲームセットまでは何が起こるかわからない。ゲームセットで勝ったか、負けたかが決まるわけですから」
その通りである。
去年の日本シリーズでも第3戦で8回までオリックスに2点のリードを許していた阪神が、8回に一挙6点を奪って逆転勝ち。そこからシリーズの流れを一気に手繰り寄せた例もある。独特なムード、一瞬にして試合の流れが変わるのがポストシーズン、短期決戦の怖さである。
あと1点を防ぐ継投もあったのでは…
そのことをわかっているはずだからこそ、三浦監督も「完敗ムード」という単語に、反応してしまったのだろう。
ただ、「ならば」と思ってしまうのは9回、ソフトバンクに3点を奪われた場面だった。