その約1年後、突然のコロナ禍が起こり、高校からのプロ入りも視野に入れていた吉納の高校野球は、練習すら満足にできずに終わる。

　東邦高の1年先輩である熊田任洋（現トヨタ自動車）が早大に入学してプレーしていたこともあり、当時の森田泰弘監督が「早稲田に行けば未来は広がってプラスになる」と吉納にも勧めてくれたという。

　レギュラーに定着したのは2年の春からだ。

　4年間の成績は、通算打率2割6分1厘、13ホームラン、52打点（10月28日現在）を記録してきた。5球団が競合した明大・宗山塁が通算打率3割4分2厘、10ホームラン、59打点だったことを考えると、その成績の優秀さが伝わる。春の早慶戦では2本の豪快なホームランを放って優勝に花を添えた。

大学ジャパンの合宿でも豪快なスイングを見せていた吉納　©Hideki Sugiyama

「宗山よりある意味、いいと思います」

「打球の飛び出しが違うんですよ。ボールが当たってから弾かれて飛んでいく速さ、すげえなと。蛭間（拓哉、現西武）と比べても吉納の方が飛ぶし、宗山よりある意味、いいと思いますよ」

　小宮山監督はそう魅力を語る。

　吉納というバッターの特徴をよく表したデータがある。大学の練習の他に吉納がしばしば通って教えを乞う「DIMENSIONING」ジムのパーソナルコーチ・十河春斗が明かす。

「彼は平均飛距離がすごいんです。80メートルは飛ばしている。うちのジムで把握している一部のメジャーリーガーを含めても、上位の3パーセントに入ります。打ち取られても大きな外野フライが多い。一番飛ぶポイントへのバットの入れ方をわかっているのが強みですね」

パーソナルコーチを務める十河氏　©Takeshi Shimizu

　十河は3年生までの吉納を見て、「ポテンシャルを生かし切れていない」という感想を持っていた。そんな中で、早大の先輩だった島川叶夢（現エイジェック）、熊田らの勧めもあって吉納が十河を訪ねてきたのが、新チームがスタートした頃だった。

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