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「最初から右投手は竹田祐選手という評価」DeNAスカウト部長が明かすドラフト全戦略…「優勝“し続ける”」ための“第3世代スカウティング”とは
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byJIJI PRESS
posted2024/10/28 11:13
“3度目の正直”でドラフト1位指名された竹田祐(左)を早速訪問したDeNA・三浦大輔監督
以上が交渉権を獲得した選手たちの寸評となるが、長谷川氏がスカウト部長として選手を見極める上で大切にしてきた部分はどこだろうか。
「うちは選手の能力だけではなく、最新のデータや動作解析、フィジカル的なところやメンタルの分野まで積極的に評価に採り入れていますが、結局は選手の“ハート”と“考え方”を注視しています。うちのコーチ陣・スタッフ陣と話していると、まず出てくるのは技術的なことではなく、選手自身の取り組む姿勢・考え方についてなんです。野球の能力の高さも大事ですけど、結局はそこが一番肝心なんだと。ここの見極めに、1年間スカウトの方々には頑張ってもらいました。プレー中の姿だけではなく、試合前後の行動やベンチ内での立ち振る舞い、日々の練習での姿、関係者への調査も含め、12球団で一番足と頭を使ってくれたと自負しています」
“第3世代のスカウティング”
長谷川氏は野球畑出身ではなく、以前は金融関係のビジネスマンとして大きな仕事に携わってきた経験がある。そして3年前、以前から興味があったプロ野球球団のマネジメントをやりたいという強い思いから横浜DeNAベイスターズに入社している。入社後は経営企画などの分野で手腕を発揮すると、昨年、スカウト部長に抜擢された。
もちろん選手個々の能力の見極めに関しては、百戦錬磨のスカウト陣に信頼を置きながら、自らも積極的に現場に足を運び、方々から集まってきた膨大な情報を分析し、丁寧にスカウト戦略を紡ぎあげてきた。長谷川氏には、大きな志があるという。
「私たちが目指しているのは“第3世代のスカウティング”です。これまでにない新しいスカウティング。動作解析など、いろいろな視点を取り入れて活用するのは、もはや当たり前の世界です。さらに発展させようと思うと、大事なのはアナログの部分になるのではないかと。人間回帰とでもいうのでしょうか。人間的な部分を突き詰め、判断し、獲得し、育成し、強いチームを作っていく。取り組み始めてまだ1年、至らないことばかりですが、頼りになるスカウトチームの皆さんと全力でやり切りました。これをより良いカタチにしていきたいですね」
目指すのは“優勝し続けること”
そう言うと長谷川氏は、想いを込めるように続けた。
「これは指名した選手だけではなく、全選手・全スタッフに伝えたいのですが、ベイスターズが目指しているものは“優勝すること”ではなく、“優勝し続けること”です。前者と後者では大きな違いがあるのは明白です。そこをいかに真剣に考え、向き合えるのか。選手ばかりではなく、まずは我々スカウトチームがそうならなければいけないと考えています」
自チームだけでなく、野球界全体への寄与をも視野に入れているという“第3世代のスカウティング”については、改めてじっくりと話を聞きたい。まずは今回、明確な選択により交渉権を獲得した選手が入団したのち、高い意識を持ち、花を開かせることができるのか、今後の推移に注目したい。