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棚橋弘至“引退宣言の日”に…「帰れ!」“新日本プロレスの未来”海野翔太27歳はなぜ大ブーイングを浴びたのか? ファンが拒絶反応を示した理由
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2024/10/19 17:35
「棚橋のゴールを決めました」2026年1月4日、東京ドームでの引退を発表した棚橋弘至47歳。10月14日、両国国技館
海野は挑戦者としてファンに歓迎されないまさかの現状に反発した。ザックとSANADAのやり取りに割り込んだ海野に、国技館のファンからは予期せぬブーイングが浴びせられたからだ。
「棚橋さんの言葉、聞いただろ。『若い世代に託す』って。オレは自信を持って言う。新日本プロレスの本隊だ。オレがやらなくて誰がやるんだよ。オレが新日本プロレスの中心で、ライオンマークを背負って、ライオンマークを守って、日本に、世界に届けなくて、誰がやるんだよ」
海野はこう言ったが、かつて棚橋がもらったブーイングよりも異質で厳しいものだった。
「帰れ!」ファンが海野翔太を拒絶する理由
悪党レスラーにおくられるブーイングは「アンポピュラー」としての勲章だが、この日、海野に発せられたものはまったくの別物だった。それはあからさまな「拒絶」だったからだ。
「帰れ!」という声まで聞こえてきた。新王者のザックがファンをなだめなかったらどうなっていたことか。海野は本人も力説するように新日本本隊であって、かつて「帰れコール」を浴びたラッシャー木村らの国際はぐれ軍団ではないのだ。この日、TVチャンピオンにもなった成田蓮は悪の世界に身を投じているから、何をしようが、何を言おうがそれはいい。辻陽太にはファンの大きな期待を感じる。では、海野へのファンの極度の拒絶反応は何なのか?
海野はヤングライオンの時からジョン・モクスリーについていたが、モクスリーの荒々しいキャラクターとは違う。客席からの時間をかけた派手な入場も含めて、「特別扱い」を感じさせてしまう。これがブーイングの後、何人かと話した結果の一致した答えだ。「本隊」はたとえ地味でもかまわないが、受け入れられない「本隊」は厳しい。
現在、ザックへの挑戦者はSANADA、鷹木、海野となっているが、この内の誰が新チャンピオンになったとしても「最も歓迎されない王者誕生」は海野ということになってしまう。挑戦者がファンから拒絶されてしまうというかつてない異常事態に、新日本プロレスは今、直面している。