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2013年生まれの“小学生レスラー”がデビュー「昔だったら考えられないこと」ジャガー横田も期待する新人・NENEが見せた“真っ向勝負”
posted2024/10/27 11:02
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
「遠慮しなくていいからね。相手は何やっても壊れないんだから」
10月13日のワールド女子プロレス・ディアナ後楽園ホール大会でのことだ。開会式の直前、バックステージで大ベテランのジャガー横田が後輩に声をかけていた。
1977年デビュー、話題のドラマ『極悪女王』の“登場人物”でもある63歳のレジェンドに鼓舞されていたのは、この日がデビュー戦の新人NENE。11歳の小学5年生である。77年デビューと2024年デビュー、61年生まれと2013年生まれが“プロレスラー”として同居しているのがディアナという団体であり、今のプロレス界だ。
ジャガーに「何やっても壊れない」と評されていたのは尾﨑妹加。高校時代にパワーリフティング3冠王になったこともあるパワーファイターで、フリー選手ながらディアナのシングルベルトを巻いている。この日はNENEの対戦相手を務めた。デビュー戦でいきなりチャンピオンの胸を借りる。そういうこともあるのがプロレスだ。それを言うなら小学生での“プロデビュー”があるのもプロレスならでは。
団体初の“小学生レスラー”
YouTubeがきっかけでプロレスに興味を持ったというNENE。中学生レスラーの美蘭に憧れてディアナに入門した。ディアナからは2019年にななみ、2022年に美蘭と中学生がデビューしている。今回は団体初の小学生レスラー誕生だ。
身長150cm、体重33kgと体は小さいものの、1月の時点で公開プロテストに合格している。小さいからこそ自分の体を自在に操るだけの筋力、体力がつきやすかったようだ。とはいえプロレスは対人競技。団体の判断として、デビューまではもう少し時間を置くことにした。
「プロテストの後も、しっかり基礎を身につけることと、気持ちを出すことを大事にした練習をしてきました」
NENEはそう振り返る。練習を頑張っていたからこそ、いい舞台でデビューさせたかったと言うのは練習の現場を預かる佐藤綾子だ。
「放課後、道場に来て大人たちに混じっての合同練習。送り迎えをするお母さんも大変だったと思います。プロテストに合格して、デビュー戦の目標にしたのが今回の大会でした」