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「なよなよしたバカなガキだった」ザック・セイバーJr.はなぜG1の頂点に立てたのか? 日本在住レスラーの素顔「引退後も日本に…」「両国が世界一」

posted2024/08/21 17:00

 
「なよなよしたバカなガキだった」ザック・セイバーJr.はなぜG1の頂点に立てたのか? 日本在住レスラーの素顔「引退後も日本に…」「両国が世界一」<Number Web> photograph by Essei Hara

辻陽太からギブアップを奪い、『G1 CLIMAX 34』を制したザック・セイバーJr.。外国人レスラーとして2人目の優勝者となった

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原悦生

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Essei Hara

 新日本プロレスの夏の本場所『G1 CLIMAX 34』を制したのは、多彩な関節技の使い手ザック・セイバーJr.だった。

 8月18日、両国国技館。30歳の辻陽太と優勝戦を争った37歳のザックは、腕を取ると足までからめた複合サブミッションで辻からギブアップを奪った。外国人としては2016年のケニー・オメガ以来、2人目の優勝となった。

“日本在住の外国人レスラー”ザックの素顔

 英国のケント州NWA・UKハンマーロック・レスリングで2002年にスタートしたザックのキャリアは20年以上になる。

「20年待った甲斐があった。みんながオレを追いかけるんだ。『G1 CLIMAX 34』の覇者、そして次期IWGP世界ヘビー級王者だ。新日本の中で世代交代が行われることは確かだ。そしてその先頭にはザック・セイバーJr.が立っている。誰もオレを止められない。これまでみんな、新日本に誰が足りないかを話し続けてきた。でもそれは、大きな過ちだった。ここにいる一人の男のことを忘れていたんだ」

 G1開幕2戦目、7月21日の大阪でヨーロピアン・クラッチ(足折り固め)で内藤哲也を下したときから、手ごたえを感じ取っていた。ザックは内藤のIWGP世界ヘビー級のベルトを手に取ると、それを掲げて場内を闊歩した。G1優勝の先のIWGPを視野に入れていた。

 内藤とは相性がいい。そして内藤はケガが多いが、ザックはケガをしない。20年もレスリングを続けてきて一度もケガをしたことがないという。

 ザックはヴィーガンだ。だが、酒は飲む。かなり飲む。飲み過ぎてちょっと失敗したこともあるので、節制するときもあるが、仲のいいクリス・ブルックスと連れ立って、新宿や渋谷界隈の飲み屋にも姿を見せる。

「今年のG1で優勝できなかったら、オレのキャリアは失敗」とまで言い切ってこのG1に臨んだ。ザックはどうしても、優勝したかった。そして、IWGP王座へと進みたかった。

「IWGPには他のどのタイトルよりも歴史と威厳がある。多くの外国人レスラーがこのタイトルに名前を刻んだけれども、日本に住んでこのタイトルを獲得した外国人はいない。オレが初めてになるだろう」

 これまで通算3度、IWGP王座に挑んできた。2018年4月にオカダ・カズチカの持つIWGPヘビー級王座、2021年11月には鷹木信悟のIWGP世界ヘビー級王座、2022年4月にはオカダのIWGP世界ヘビー級王座に挑んだが、いずれも戴冠には至らなかった。

 ザックは覚悟して4度目に挑む。本当のトップと評価されるためにはIWGPが必要だという強い思いがあるからだ。

【次ページ】 「日本で最高のレスラーになるためにここにいる」

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