プロレス写真記者の眼BACK NUMBER
棚橋弘至“引退宣言の日”に…「帰れ!」“新日本プロレスの未来”海野翔太27歳はなぜ大ブーイングを浴びたのか? ファンが拒絶反応を示した理由
posted2024/10/19 17:35
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
10月14日、両国国技館。棚橋弘至はデビュー25周年記念試合の6人タッグマッチを終えると、マイクを手にした。
「あっという間の25年が経ちました。これもひとえにみなさんが、熱い声援、ときどきブーイングをおくってくれたおかげだと思います。ありがとうございました。こうして多くのみなさんの前で、いつまでも戦っていたい。戦っていたいという思いはありますが……棚橋のゴールを決めました。2026年1月4日。だから、あと1年2カ月あります」
「最初は支持されなかった」棚橋弘至の足跡
もう少しやると思っていたが、棚橋弘至はついにレスラー生活にピリオドを打つことを決意した。最終的に26年余のプロレスラー人生に別れを告げて社長業に専念する。
プロレスラーを辞めるという決断はそんなに簡単なものではない。「疲れない」という言葉を好んで使っていた棚橋にすればなおさらだ。
「100年に一人の逸材」と棚橋は自身を表現してきた。だが、そのファイト・スタイルはすんなりファンに受け入れられたわけではなかった。硬派だった新日本のファンは「愛してまーす!」と拳を上げる棚橋を簡単には支持しなかった。今でこそ暗黒期を乗り切った功労者という一定の評価だが、当時はそんなに棚橋を見たいというわけではなかったのは事実だ。だが、棚橋は真摯にプロレスとそのプロモーションに取り組んできた。
IWGPヘビー級王座に8回。G1 CLIMAX優勝3回。プロレス大賞MVP4回。年間最高試合賞1回(vs.オカダ・カズチカ)。中邑真輔との度重なる好勝負もファンの心をつかんだ。
だが、疲れないはずの棚橋も47歳で肉体の衰えは隠すことができない。それでもリングに上がり続けたが、ついに幕引きを選択する時がきた。社長という大役を引き受けて、腹は決まった。
棚橋はタッグを組んだ海野翔太、エル・ファンタズモと25周年の勝利を祝ったが、EVILが放っておくわけもなかった。棚橋ショックのファンをあざ笑うかのように「オレの会社だ」とEVILは叫んだ。棚橋の引退ロードのスタートはEVILとの抗争になってしまうのだろうか。