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引退の西武・金子侑司“アンチコメント”に悩み「正直、きついですよ」と口にした日も…華やかなプレーの陰で貫いた「信念の両打ち」と繊細な素顔
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byKYODO
posted2024/10/15 11:00
引退セレモニーでチームメートに胴上げされる金子
アンチコメントに「正直、きついですよ」
見た目はスタイリッシュでプレーは華やか。しかし、内面はとても繊細で、人から「見られること」に敏感な選手だったと思う。
結果が出ないときにはアンチコメントに悩まされたこともあった。
「ライオンズの中でダントツで叩かれてるんちゃうかなぁ」と苦笑いしたが、どれだけ傷ついているかはその表情を見れば一目瞭然だった。
「SNSで、僕はエゴサーチは全然しないんですけど、周りから言われることも多いですね。気にしないようにと思っても、正直、きついですよ」
「応援してくれる人のために」
注目度の高さや期待の大きさが、反動となって批判に変わる。書いた方はほんの軽い気持ちでも、不振に悩み、なんとか脱しようと努力を続ける選手にとっては辛い。
「でも、一方で応援してくれる人もいます。本当にありがたいです。そういう人たちのためにも、グラウンドで輝いているところを見せたい」
ひどい言葉に傷ついたあとでも、グラウンドに行き、自分のレプリカユニフォームや名前入りタオルを掲げている人を見つけると「もう一度頑張ろうという気持ちになる」と語っていた。おそらくファンの存在が支えであり救いだったのだろう。
万感の“源田とのハグ”
「ゲン(源田壮亮選手)か僕かがホームランを打ったらゲンとハグしますよ」
これは何年も前の公式ファンブックで筆者が対談を担当した際の金子のコメントだ。その公言を雑誌が発行された直後から律儀に守り、引退試合でも実現してくれた。
メディアのうしろには大勢の読者、ファンがいることを理解し、取材で発した言葉イコール、ファンとの約束だととらえていたからだろう。
ファンの愛情を人一倍、敏感に感じ取り、誰よりもそれをファンに返そうと努めた選手だった。