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石川祐希や西田有志に説得され…男子バレー“次世代ミドル”が得た宝物「あの3人を見てきたからこそのエバデダン・ラリーでありたい」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byNumberWeb
posted2024/10/10 11:03
次世代のミドルブロッカーとして期待される大阪ブルテオンのエバデダン・ラリー(24歳/195cm)
落選後も「チームのために」とやるべきことを尽くし、初めての五輪はスタンドで味わった。行く前は「ネーションズリーグもオリンピックも世界大会の一つ」と思っていたが、実際に目で見て、肌で感じる景色は全く違った。
会場を埋め尽くす観客。ナイスプレーが出れば自然と湧き起こる拍手と歓声――。
それまでの大会とは違う目つきと気迫で戦う他国の選手を見るだけで「オリンピックには魔物がいる」と言われる意味がわかる気がした。
「正直に言うと、落選してからオリンピックまで同行するかどうか、迷ったこともあったんです。でも(石川)祐希さんや(西田)有志さんからも『オリンピックの雰囲気を味わったほうがいい』と言われて、実際に自分もオリンピックを経験してみたかったし、このチームで最後までいたかった。行こうと決めて、行ってよかったです」
大塚の顔を見て、涙が溢れた
イタリア戦の第3セットにマッチポイントを握った時点で「行ける」と確信した。だがそこからの1点が遠い。ここで終わるなど微塵も考えていなかったのに、大逆転勝ちに喜ぶイタリアの選手たちをただ茫然と見つめることしかできなかった。
自分よりも、ここで戦った選手たちはもっともっと悔しさを噛みしめているんだ。
少しでも、前を向ける言葉をかけなきゃ。
そう思いながらコートへ降りたはずなのに、同級生でパナソニックでも共に戦って来た大塚達宣の顔を見たら、言葉よりも先に涙が溢れた。
「タツ(大塚)はオリンピックが終わったらイタリアに行くんだ、とか、急にいろんな感情が込み上げてしまって。『お疲れさま』と言ったつもりなんですけど、声が出せないぐらい泣けて泣けて、止まりませんでした」
長い戦いの終わり。だが、エバデダンにとってはここからが始まりでもある。