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「反スポーツ的行為」黒田監督発言に賛否のJ1天王山、本質は“タオル問題”ではなく…カメラマンが広島で見た“異変”「あの黒田監督が…」
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2024/10/02 17:49
9月28日のJ1第28節、FC町田ゼルビアの黒田剛監督はもどかしそうに両手を上げる。写真奥はサンフレッチェ広島のミヒャエル・スキッベ監督
「悪役」のイメージ先行も…町田の“明確な強さ”
実際、町田はその後も勝ち点を積み重ねていった。神戸だけでなく、少ないタッチ数でボールを動かすことに長けるアルビレックス新潟や、時間をかけずに攻撃を完結させることを目指してくる湘南ベルマーレのような相手にはロングカウンターを発揮しきれないこともあったが、J1で多数派となっている「ボールを持つと時間をかけてでも崩そうとしてくるチーム」に対しては滅法強く、1巡目の19試合を12勝3分4敗で駆け抜けた。
徹底された激しさやロングスローの多用、ボールへの水かけなどが切り取られ「悪役」としての評判が先行しがちだが、試合を目の当たりにすれば勝利へのこだわりが徹底された「強いチーム」であることは明らかだった。
各チームによる対策が進んだだけでなく、平河悠が海外へ旅立ち、柴戸海、チャン・ミンギュ、バスケス・バイロン、荒木駿太、中山雄太ら負傷者が出て台所事情が苦しくなったことも重なり、後半戦は12試合で5勝5分2敗とペースを落としていた。それでも、J1初昇格のチームは優勝争いの主役であり続けてきた。
満を持して乗り込んだ広島で完敗…いったいなぜ?
そして迎えた天王山。町田はシーズンの戦いを通じて手に入れてきた様々なオプションを可能な限りアウェイの地へ持ち込んだ。
たとえば、右サイドバックには望月ヘンリー海輝が約1カ月ぶりにスタメン復帰。キックオフ直前まで黒田監督から直接声をかけられていた望月は4月の広島戦では不在だった選手の1人であり、当時対応された縦のロングボール以外で攻撃のきっかけを作るための重要なピースになるのでは、という予感を抱かせた。実際、彼はロングフィードを空中戦で繋げる得意な形で紫色に染まったスタジアムを何度も驚かせた。
夏の移籍で加入した相馬勇紀と白崎凌兵もスタメンに名を連ね、セットプレーは当然のように様々なパターンが用意された。また、試合途中からは最近の試合で攻撃の中心となっていた杉岡大暉と藤本一輝が縦に並ぶ左サイドが出現。さらにエリキとミッチェル・デュークも登場してくるという厄介な構成となっていた。
しかし、町田はチーム全体で広島に飲み込まれ、4月に続く完敗を喫した。
シーズンダブルを許しただけでなく、またしてもチャレンジャーとして強さを出せないまま敗れるというショッキングな試合展開となったのだ。