ニューヨークに本拠を置く日本人メディアの筆者はリンドアが出場した今季のゲームを少なからず現場取材し、同時に大谷の動向もフォローしてきた。その上で私見を述べると、WARから少々離れても「リンドアが候補に入る」という見方がクレイジーだとは思っていない。リンドアは投手優位なシティフィールドを本拠地としながら上質な打撃成績を残した上で、単に“守備に就いている”というだけでなく、内野の要である遊撃手として好守を継続してきた。

　スタットキャストが算出する「Fielding Run Value (FRV)」という指標では、プラス13でメジャーの全選手の中で12位（750イニング以上、守備についた全192人中）。遊撃手の中ではア・リーグのMVP候補であるボビー・ウィットJr.（ロイヤルズ）に次ぐ僅差の2位であり、ゴールドグラブ賞受賞も有力と目されている。

「50-50」がとてつもない偉業であると認めた上でも、「50-50-守備の貢献なし」と「30-30-遊撃手でゴールドグラブ賞」と並べたらどうだろう？　1年を通じてショートストップとしてハイレベルで守り続けることの難しさ、大変さ、大切さは言うまでもないだけに、後者に好意的な目を向ける人がいても不思議はなかった。

攻守の貢献度を高く評価されているフランシスコ・リンドア（30歳）　©︎AP/AFLO

地元記者の後押しも追い風に？

　それほど負担の大きなポジションながら、リンドアは147試合目まで全試合に出場してチームを引っ張った。特にオールスター明けから打率.303、14本塁打とプレーの質を上げ、2年ぶりのプレーオフ進出に向けて快進撃を継続するチームを様々な意味で牽引している。

　去年までメッツに勤務した元職員が、「そのリーダーシップは本当にとてつもない」と言うほど統率力も評判高い。それらのバックグラウンドゆえ、9月中旬以降はホームでの毎打席で“MVP”チャントを浴び続けてきたのだった。

今年4月、塁上で言葉を交わすリンドア（左）と大谷　©︎AP/AFLO

 「とても気に入っているよ。打席に立つたびにファンからの愛を感じられるわけだからクールなことだ。ファンが自身をサポートしてくれている時、選手はそれを感じられるもの。おかげで最高のプレーをしようという気になる」

　地元ファンから歓待を受けていることに関し、リンドアはそんな気持ちのいい言葉も残していた。30歳のプエルトリコ人は辛抱強い取材対応で“メディアのダーリン”にもなっており、地元記者たちのバイアスも多少は追い風になっていたに違いない。

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