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「えっ、大谷さんMVP当確じゃなかったの?」大谷翔平“衝撃50-50”で「DH反対派」もさすがにダンマリ「日本人が知らないMVP選考ウラ事情」

posted2024/09/21 11:06

 
「えっ、大谷さんMVP当確じゃなかったの?」大谷翔平“衝撃50-50”で「DH反対派」もさすがにダンマリ「日本人が知らないMVP選考ウラ事情」<Number Web> photograph by Getty Images

9月19日、ついに「50-50」の偉業を達成したドジャース大谷翔平。試合後のインタビューで「一生忘れられない1日になった」と語った

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杉浦大介

杉浦大介Daisuke Sugiura

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「やはりDHの選手をMVPには選びづらいというのが正直なところだ。ただ、今年は大谷がこれだけ圧倒的なプレーを続けているのだから、もしも私が投票権を持っていたら大谷に入れるのではないかと思う」

 ニューヨークに拠点を置くある著名メディアの記者が9月中旬、そんな言葉を残していたことがあった。主にアメリカ東海岸では代表的な意見だったのだろう。ドジャースの大谷翔平選手がメジャー史上初の50-50(50本塁打&50盗塁)に向かって邁進する一方で、9月はMVP争いに関する話題が活発化していった印象があった。 

 その大谷は9月19日、WBC優勝の思い出の地でもあったマイアミでのマーリンズ戦で6打数6安打3本塁打10打点2盗塁と大爆発。晴れて50-50を達成し、その常軌を逸したキャリアにまた新たな1ページが加わった。

DHは守備の貢献がない

 このマイルストーンに近づいている段階でMVP当確ではなかったのか――日本のファンは怪訝に思うのかもしれない。

 ナ・リーグで最大の対抗馬に挙げられたメッツの遊撃手フランシスコ・リンドアは、打率.271、31本塁打、86打点、27盗塁(9月20日時点)。表層の数字だけを見れば大谷に比べるべくもなく、チーム成績もドジャースがメッツを上回っている。

 それにもかかわらず、早い段階で“大谷当確”と認識されなかった理由はどこにあるのか。その背景として、もともとDHの貢献度を軽視する風潮があったアメリカで、特に最近は守備評価も含めた指標が重宝されているという事実がある。

 MVP選考の際、走攻守を総合的に評価した勝利貢献度指数であるWAR(Wins Above Replacement)の数値を重視している選者は数多い。DHは守備の貢献が皆無のため、専門メディアの『FanGraphs』や『Baseball Reference』などが独自の算出方法で計算するWARで飛び抜けた数値を叩き出すのが必然的に難しくなる。

 それでも「Baseball Reference」のWARでは大谷が7.4でナ・リーグのトップに立っていることは、今季、“球界のユニコーン”が残してきた成績の凄まじさを示しているといえよう。ただ、「FanGraphs」の算出するWARでは、あの歴史的な9月19日を迎えるまではリンドアが7.4で大谷の7.0よりも上だった。マーリンズ戦での大活躍で大谷が7.7として逆転したあとでも、リンドアとの差はわずかに過ぎない。この数値こそが、“リンドアが対抗馬としてふさわしい”という論説の最大の根拠になっていたことは間違いない。

【次ページ】 筆者も認めるリンドアの貢献度

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