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鹿島アントラーズと共に歩んで30年。ファンのことを第一に考えるLIXILの新たなスポンサーシップのかたち
text by
福田剛Tsuyoshi Fukuda
photograph byKASHIMA ANTLERS
posted2024/09/26 11:00
LIXILブランドマーケティング室の児玉大輔は「いつまで経っても行列が途切れないため、試合開始直前まで対応に追われました」と、当日の反響の大きさを語った。
「これだけ多くの人が集まってくれたのは、LIXILならきっと面白いことをやってくれるはずと我々のイベントに注目してくれているからだと思います。長年の積み重ねがサポーターからの信頼に繋がってきたのかもしれません」
しかし、これほどまでにファンから高い信頼を得るようになるまでには、失敗もあったと、庭野は言う。
「選手に弊社のショールームで、商品プロモーションに協力をしてもらったこともありました。でも、ファンからしたら好きな選手がトイレに座っている姿なんか見たくはないですよね。この頃は主語がLIXILになっていました。これは大きな反省点です。今は、まずはファンが喜ぶことを考え、同じ方向を向きながら、LIXILとして伝えたいメッセージを盛り込んでいく。主語をファンにした、ファンマーケティングへと切り替えました」
これからもファンと歩み続ける。サポートは女子プロゴルフ、Bリーグ、eスポーツへと拡大
ファンマーケティングの基盤となっているのが、2016年からスタートした『LIXIL×SPORTS(リクシルスポーツ)』だ。クラブや選手のインタビューなど、ここでしか見られないオリジナルコンテンツをYouTubeで配信するほか、XやインスタグラムなどのSNSでも最新情報を発信している。
「LIXIL CUPと銘打ったアントラーズ選手が出場する大会を開催しYouTubeで配信すると、選手の様子が見られるといって、ファンが喜んでSNSで拡散してくれるようになり、さらにファンが増える。『LIXIL×SPORTS』を通じてLIXILを身近に感じてもらえる土壌になっています」(庭野)
2018年からは女子プロゴルファーの堀琴音と契約、2019年にはeスポーツ・SCARZとBリーグ・サンロッカーズ渋谷の2チームもメンバーに加わった。2チームをサポートするようになった理由をLIXILブランドマーケティング室の大矢尚史はこう語る。
「年代的なバランスを考えるとアントラーズやプロゴルフは40代未満の若年層に対しては若干リーチが弱い。そこを補強するために若者の人気が高いバスケットボール、eスポーツへとサポートを広げていったというのがマーケティング的な狙いです。そしてもう一つの理由が、共に成長できる存在であること。Bリーグもeスポーツもプロ化したとは言え、発展途上です。かつてアントラーズと歩んできたように、共に成長を続けたいと考えています」
異なる競技をサポートすることで新たなメリットも生まれた。大矢は続ける。
「アントラーズでの施策をサンロッカーズで実施したり、逆にサンロッカーズの成功例をアントラーズにフィードバックしたりと相乗効果を発揮できています。また、選手たちも互いの試合に招待したりと、『LIXIL×SPORTS』を通じて新たな交流も生まれています」
チームや選手、ファン、そしてスポンサードする企業。そのすべてに喜びをもたらすLIXILの取り組みは、スポーツをサポートする全ての企業にとってロールモデルといえるかもしれない。児玉は言う。
「企業活動である以上、長くサポートを続けるためには会社にとっても有益な活動とする必要があります。スポンサーシップを通じて、多くの方々にLIXILのファンになっていただけるよう、今後もファンに寄り添った活動を続けていきます」