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“りくりゅう先輩”がきっかけに…日本ペアの新星、長岡柚奈19歳&森口澄士22歳が成長中!「隣に信頼してる人がいる」結成2季目の関係性
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byAFLO
posted2024/09/15 11:05
りくりゅうに続く飛躍が期待される日本の長岡柚奈&森口澄士ペア
“ペアへの転向”はなぜ難しい?
2014年ソチ五輪の団体戦を目標としてペアに転向した木原龍一は、10年後にはパートナーの三浦璃来と世界のトップに到達するという快挙を遂げた。日本は今、彼らに続く若手ペアを育成する必要性に迫られている。
長岡&森口が過分なプレッシャーから解放されるには、ライバルペアが何組も誕生して国内で競い合うという健全な環境が必要だ。日本スケート連盟もそのことは十分に理解している。
「でも状況は単純ではないんです」とある関係者は説明する。
「シングル選手をペアに転向させることは、その選手を大切に育ててきたコーチから奪うことにもなるので……」
三浦璃来はかつて本田武史コーチの元でトレーニングをしていたシングル選手だった。「タケシと私は現役時代友人で、信頼関係があったので彼女のペア転向はスムーズにいきました。シングルのコーチの協力なしでは、ペア強化はありえないんです」とブルーノ・マルコットコーチは語る。
結成2季目の関係性「隣に信頼してる人がいる」
だが長岡はプレッシャーと同時に、ペアにならなければ味わえなかった素晴らしさもあることを強調した。
「私は緊張しやすいタイプで、ペアをはじめていきなりNHK杯に出してもらって、プレッシャー感じていたんですけど、そのたびにすみくん(森口)が落ち着かせてくれました。調整の時とかちょっと崩れると悪い方向に行きがちだけど、すみくんがそれを感じ取って『大丈夫だよ、こういう時期も来るから。今下がってるということは、来週はよくなる』と励ましてくれるんです」
そう話しながら、長岡は再び目を潤ませた。
「隣に信頼してる人がいるっていうのは、演技しているときに声をかけてもらったりもするので、そういう時に落ち着いて息を整えることができる。パートナーがいるということはとても良いことだと思います」と、最後は笑顔を見せて頷いた。
「りくりゅう先輩だけが頑張るんじゃなくて…」
今季の目標を聞くと、森口は「まずは二人で世界選手権に出場すること」と答えた。だが、目指しているのは出場だけではない。「(来季の)オリンピックの枠を意識しないわけにはいかない。10位以内は今の状態ではまだまだ遠いかもしれないけど、自分たちにならできると信じて練習しています。りくりゅう先輩だけが頑張るんじゃなくて、僕たちも頑張って……今、本田ルーカス剛史と清水咲衣ちゃんもジュニアで頑張ってるので、来シーズンみんなで出れるよう。自分たちにプレッシャーを与えてるんですけど、そこを目標に頑張っていきます」
次の二人の挑戦は、11月のNHK杯になる。健闘を祈りたい。