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「1億もらってもおかしくない」“ヤクルト入団2年目で200安打”青木宣親が契約交渉で“ハッタリ”をかましたワケ「だって僕、イチローさんですよ」
text by
青木宣親×尾崎世界観Norichika Aaoki & Sekaikan Ozaki
photograph byJIJI PRESS / Miki Fukano
posted2024/09/12 11:07
ヤクルト入団2年目でセ・リーグ史上初の200安打を達成した青木宣親。当時の契約交渉の舞台裏を明かした
本当におこがましいんですけど、僕はその時にイチローさんを引き合いに出したん です。「いや、だって僕、イチローさん以来の200安打なんですよ!」って(笑)。 もちろん、イチローさんなんて歴史上の人物みたいな方なので、決して肩を並べたな んて思っていたわけではないです。ハッタリです。言うだけ言ってみよう、と。 (1994年)当時、イチローさんは確か800万円から8000万円になったんです。僕は元の年俸が1000万じゃないですか。「だったら1億もらってもおかしくないですよ。だって僕、イチローさんですよ」って。それが殺し文句(笑)。
そうしたら、当時の常務が「何を言ってんだよ! イチローはもの凄い選手なんだぞ。引き合いに出すんじゃない」って。いやもちろん、それはそうなんですけどね。でも、「そんなの関係ないです。僕が言っているのは成績を残した、っていうことで すよ」と言い返したんです。
さらに「去年言いましたよね、一軍で活躍したら上げてくれる」って(笑)。もう 粘りに粘りました。常務は「ちょっと考えておく」と一旦は保留になったんですが、 最終的にはそこから少し上がりましたから粘った甲斐はあった。
2回目の提示は7000万円ぐらい。そこでハンコを押しました。当時の契約更改はそんな感じでしたね。お金のことですからピリピリもしているんですけれど、基本的にやはり結果を出している選手についてはある程度上げてあげないと、という空気はあるんですよ。
ただ、結果を残していない選手には結構シビアです。そこは断固として上げない、 というところがある。最近は契約更改について後輩から相談を受けることもあるんで すよ。僕は「言いたいことがあるなら、しっかり主張した方がいいよ」って伝えてい ます。誠実に考えを伝えれば、分かってもらえることもありますからね。
「僕、結婚したんですよ。子供が生まれるんですよ」なんて殺し文句を出したり。よく言うじゃないですか、「おむつ代ください」って。面白いですよね。そんなにおむつは使わねえだろ、ってね(笑)。
数字で評価され、数字で返してもらう
金額が高いほど嬉しいというのは素直なところとして、それ以上に自分がどう評価されているか、どれだけ必要とされているか、ということですから。契約更改で金額にこだわるのは当然だし、プロとして大切なことだと思っています。