野球部の監督を直撃「当時から送球に難があった」

　送球は「普通じゃないですかね」とのことで、他のチームメイトも送球については一様に言葉を濁す。それがどうしてああなったのか。監督に聞くしかない。当時の指揮官に「監督責任」を問うと、こう答えた。

「お恥ずかしい限りで、周りに『本当に野球部だったの？』『監督の指導が悪いんじゃないのか』と言われました。当時からスローイングに難があったのはたしかです」

岸田総理“疑惑の投球フォーム”。2023年3月10日、WBC韓国戦の始球式で　©Getty Images

　監督も認識していた送球難。のちの総理の身体にいったい何が起きていたのか。肩のケガなのか、イップスなのか。

「いや違うんです。小さい時から野球をやっていたわけではないからか、野球部に入って投げさせてみたら、あの始球式と同じ、いわゆる“女の子投げ”でした。うーん、自分も直そうとはしたんですけど……ね（笑）」

山なりのボールはストライクゾーンを大きく外れた　©JIJI PRESS

　指導の甲斐なく、昨年の始球式ではその悪癖が出てしまった格好に。だが、当時の監督は送球難を織り込み済みで、岸田氏をセカンドに起用している。いったいなぜか？

「私が指揮を執っていたのは、『弱くても勝てます』（高橋秀実著）のモデルとなった時期よりはるか前。一勝できれば御の字という『同好会』的な野球部だったんです。私も大学生で、ボランティアとして指導していましたし、部員もそこまで集まらず、チャンスは多くある状態でした。

　その中で岸田くんはすごく真面目。絶対サボったりしないし、本当に好青年でした。たしかに長距離を走らせても前の方ではなかったし、送球もアレなところはあったけど、とにかく一所懸命練習に取り組むんですよ。そういう姿を見ていると、監督として『出してあげたいな』と思うじゃないですか（声を震わせる）。寡黙にそして熱心に練習に取り組む彼に試合に出てほしいなと思って、2年夏にセカンドで出場させました」

　セカンドに任命したのも親心ゆえだった。「任命責任」について問うと、こう答える。

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