「取り損なった時にグラウンドの状態も悪いから、どこかにぶつけたりとか、私も監督として怖かった。そういう部分があったから思い切り強くノックする時は、誰が頑張って追いかけても届かないようなところに打っていました。正面に打つときも打球を弱めて、イージーゴロ、イージーバウンドで練習するようにしてました」

野球部関係者はみな人柄を評価「本当にいい子なんです」

　ケガをしないように優しいノックをしてきた監督にとって、久々に再会した政治家・岸田文雄の姿は目を見張るものがあったという。

「高校生のころは野球でしか関わっていないので、自信がないような子という印象でした。ただ、外務大臣になった彼と会って、やっぱり地位が人を育てるのかなって思いました。OB会で対面した時に、すごく自信を持ってしゃべっているんです。でも謙虚な態度は変わらず、私のところに来て、『僕らの世代の監督』と声をかけ、感謝してくれるんですよ。本当にいい子なんです」

大暴投にもめげず、栗山英樹監督と笑顔で記念撮影　©Naoya Sanuki

　今回、野球部の先輩、同級生、後輩、監督などから話を聞いたが、悪口は一切聞かれず、人柄を評価する声ばかりだった。そういえば、初期の世論調査では「政策は適切ではなく、指導力はないが、人柄は良いと思う」という意見が多数を占めていたことを思い出す。

　自ら党首交代を選び、自民党総裁のマウンドから降りる岸田首相。投げるのは苦手な、人の良いセカンドが再登板する日は果たして来るか。