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「男子チームで主将」「水族館リフティング」“天才サッカー少女伝説”は本当? なでしこ谷川萌々子本人に聞く「親元を離れて福島に」12歳の転機
posted2024/09/01 11:07
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph by
N.G.E(L)/JMPA(R)
お父さんとボールを蹴って、お母さんとは水族館で…
谷川萌々子(19歳)はパリ五輪女子サッカー、ブラジル戦で30mのロングシュートを決めて、サッカーファンだけでなく世間に知られる存在となった。ただ実は……さかのぼること7年前の2017年、すでに地元テレビ局の取材を受けた経験がある。
〈未来のなでしこ〉
そんなテロップとともに紹介されたのは、当時小学6年生、12歳の谷川だった。
谷川がサッカーと出会ったのは2009年、4歳のとき。幼稚園でサッカー教室を体験したのがきっかけだった。父は若いころにサッカーや野球、母は剣道とソフトボールをやっていたこともあって、愛娘にスポーツをさせようとするのは自然な成り行きだった。
「お父さんとたくさんボールを蹴っていたことは覚えています。それと、お母さんがインタビューされている動画を見たんですが……」
その動画では、母親の清加さんが〈水族館に着いて萌々ちゃんを見たら、リフティングしながら歩いていました〉と明かしている。本人にそのエピソードは本当なのかと確認してみると、少し照れ笑いを浮かべた。
「記憶をたどると、確かにリフティングしちゃっていたのかなと」
娘の様子に気づいたお母さんが、すぐボールを取り上げてリフティングはおしまい。本人も反省して、周辺にも迷惑をかけず、魚たちを驚かすようなことはなかったが……それほどまでにサッカーボールに触るのが大好きだった。
そんな少女・谷川は、2015~18年、小学3年生から6年生まで地元のJリーグクラブ、名古屋グランパスのユニフォームに袖を通す。
「正確に言うと、グランパスのスクール選抜のチームだったんです」
パリ五輪後、単独インタビューに応じてくれた谷川は当時について、こう回想する。
グランパスのジュニアチームで“主将やってみなよ”
谷川は「グランパスみよし」で男子と渡り合うどころか、攻守にわたって中盤を取り仕切っていく。2017年10月に行われたフジパンCUPユース U-12東海大会で初優勝を飾り、優勝カップを掲げた谷川自身も大会優秀選手に選ばれている。そしてこの大会を含めて、キャプテンマークを左腕に巻いたこともある。
幼少期を過ごしたグランパスで最も覚えているのは……サッカーの原理原則を教えてもらえたことだった。