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「お父さんの助言だけじゃない」なでしこ“魔法の30m弾”全真相…19歳谷川萌々子の証言でわかった“異次元すぎ視野”「パスがズレた瞬間に」
posted2024/09/01 11:06
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph by
Takuya Kaneko/JMPA
サッカーをやっていて幸せだなと感じた瞬間でした
サッカー王国のブラジル人記者をして 「魔法」と評しつつ唖然とさせ、英公共放送『BBC』でも掛け値なしの「ベストゴール」と絶賛された。
パリ五輪でスーパーゴラッソを叩き込んだ19歳のワンダーガール。谷川萌々子には、今までになかった感情が湧き上がっていた。
「なんて言うんだろう……自分自身、たくさんの方が見てくれる中でのプレーはすごくワクワクしますし、サッカーをやっていて幸せだなと感じた瞬間でした」
パリ五輪のなでしこジャパンが世間に最大のインパクトを与えたのは、谷川がブラジル戦後半アディショナルタイムに決めた30mのロングシュートだった。
世代を問わない国際大会初出場での代表初得点。知る人ぞ知る存在だった谷川が、一躍なでしこ新世代を担う新星として、一躍脚光を浴びた。試合後のフラッシュインタビューでは、“ブラジルのGKが前に出る傾向がある”と父からメッセージで伝えられたことを明かしたことが話題になった。ただ……。
「試合後の興奮した状態でインタビューに答えていたので、お父さんの話を出してしまったんです」
所属先のFCローゼンゴード(スウェーデン)に旅立つ数日前、リモート取材に応じてくれた谷川は、画面越しで照れ笑いを浮かべつつ、こう続けた。
「もちろん、お父さんのメッセージが、自分の中で無意識というか頭のどこかに入っていた状態でピッチに立っていたのかな。それは良かった1つの理由だと思います」
あのゴールが生まれた要因に、父の助言があったことはたしかだし、感謝の念は尽きない。後述するが、ゴール直後には両親への思いがほとばしっていたのだから。
本人が語る“ゴール10秒前からあった伏線と全真相”
しかし「太さん(池田太監督)からはピッチに入る前に『思い切りやってこい。ロングシュートを狙っていこう』と伝えてもらいました」との谷川の話しぶりを見ると、決定的なファクターはそれだけではなかったように感じる。
ではもう少し詳しく、19歳の頭脳と身体は何を根拠に判断、反応して右足を振ったのかを聞きたい。そう伝えてゴールシーンの動画を共有すると、谷川は快く“本人だけが知る全真相”を解説し始めてくれた。
「あ、まだ、この時は準備できていないんです。少し戻していただけると」