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“トライアウト廃止”提案は「現役ドラフト」も要因か…大竹耕太郎に細川成也、水谷瞬の活躍と戦力外「二軍で塩漬け逸材」新天地の成績は?
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/08/27 17:34
廃止提案が出たという12球団合同トライアウト(2022年撮影)。「現役ドラフト」の成功例が出ていることも要因なのかもしれない
2019年、石見智翠館高からドラフト5位で入団。193cmの巨体と身体能力の高さで早くから注目されたが、粗削りな部分が目立ち、肩などの故障もあって、層の厚いホークスでは一軍出場の機会がなかった。しかし日本ハムの新庄剛志監督は5月以降、スタメンで起用。現在まで3割をキープ。オールスター戦にも出場した。
水谷は今年からチームメイトになった万波中正とは同学年である。アフリカ系の父と日本人の母を持つという共通点もあり、体格もほぼ同じ。しかし長打力が特長の万波に対して、水谷はシュアな打撃が売りと、個性が違うのも面白い。こんな逸材が二軍に埋もれていたとは、と感嘆する。
水谷以外にも戦力になっている選手がいる。中日からオリックスに移籍した鈴木博志は、救援陣が次々離脱する中で5月以降、中継ぎで起用され、今は勝ちゲームで投げる貴重な存在になっている。ロッテ時代は故障がちだった佐々木千隼も今季DeNAに移籍したが、7月以降は中継ぎで起用され安定感のある投球を続けている。
プロ野球では能力が高くても、ポジションがかぶっていたり、指揮官の方針に合わなかったりしてファームでくすぶる選手は必ず出てくる。そういう選手が他球団で水を得た魚のように活躍するのを見るのは、ファンとしてもうれしいものだ。もしトライアウトが廃止されたとしても、現役ドラフトが自身のキャリアにとってチャンスになる可能性をこの2年間が示したともいえる。
MLBに比べて選手の流動性が低いといわれるNPBだが、成功例が続々出ているのだから、今季の現役ドラフトは、ぜひ「2巡目」まで選手指名をしてほしい。
週間記録セ・リーグ
【2024年8月19日~8月25日 週間成績】
〈セ・リーグ〉
・今季成績
広 島110試59勝46敗5分 率.562 差--
巨 人115試60勝49敗6分 率.550 差1
阪 神117試58勝53敗6分 率.523 差4
DeNA114試55勝57敗2分 率.491 差7.5
中 日117試48勝61敗8分 率.440 差13
ヤクルト113試47勝62敗4分 率.431 差14
・19週目の成績
DeNA6試4勝2敗0分 率.667
阪 神6試4勝2敗0分 率.667
巨 人6試3勝3敗0分 率.500
広 島6試3勝3敗0分 率.500
ヤクルト6試2勝4敗0分 率.333
中 日6試2勝4敗0分 率.333
DeNAと阪神が好調。阪神は首位広島と4差で優勝戦線に踏みとどまっている。
〈打撃成績5傑〉※打撃の総合指標、RC=Runs Created順
森下翔太(神)22打11安1本5点 率.500 RC8.70
山本祐大(De)14打8安2本8点 率.571 RC8.32
浅野翔吾(巨)23打11安1本5点 率.478 RC7.41
宮崎敏郎(De)19打10安1本6点 率.526 RC6.66
大山悠輔(神)25打9安2本8点 率.360 RC5.73
阪神・森下、巨人・浅野と若手の活躍が目立つ。DeNAの山本は「打てる捕手」として存在感を増している。本塁打はDeNAの佐野恵太が3本でトップ。打点はDeNA山本と阪神・大山の8、盗塁は中日・岡林勇希の2が最多だった。
〈投手成績5傑〉※リーグ防御率に基づくPR=Pitching Run順
菅野智之(巨)1登1勝7.1回 責0率0.00PR3.10
才木浩人(神)1登1勝7回 責0率0.00PR2.96
高橋奎二(ヤ)1登1勝7回 責0率0.00PR2.96
戸郷翔征(巨)1登8.1回 責1率1.08PR2.52
丸山翔大(ヤ)3登5回 責0率0.00PR2.11
巨人の菅野は8月25日の中日戦で7.1回を零封。救援では巨人・大勢、阪神・岩崎優、広島・栗林良吏、ヤクルト小澤怜史が2セーブ、阪神のゲラ、巨人・高梨雄平が2ホールドを挙げた。
週間記録パ・リーグ
〈パ・リーグ〉
・今季成績
ソフトバンク113試71勝39敗3分 率.645 差--
日本ハム114試60勝47敗7分 率.561 差9.5
ロッテ115試57勝52敗6分 率.523 差13.5
楽 天111試55勝54敗2分 率.505 差15.5
オリックス114試51勝60敗3分 率.459 差20.5
西 武113試35勝76敗2分 率.315 差36.5
・19週目の成績
日本ハム6試5勝1敗0分 率.833
楽 天5試4勝1敗0分 率.800
西 武6試4勝2敗0分 率.667
オリックス6試2勝4敗0分 率.333
ソフトバンク5試1勝4敗0分 率.200
ロッテ6試1勝5敗0分 率.167
ソフトバンクは7月30日にマジック42が点灯したが、現在21。今週はマジックの対象である日本ハムが好調だったが、この時期での9.5差はあまりにも大きい。西武はオリックスに3連勝した。
〈打撃成績5傑〉
清宮幸太郎(日)26打12安5点 率.462 RC6.68
佐藤龍世(西)17打8安1本2点 率.471 RC5.68
レイエス(日)22打8安2本7点 率.364 RC5.00
周東佑京(SB)16打6安2点 率.375 RC4.14
ポランコ(ロ)19打6安1本3点 率.316 RC3.42
日本ハム清宮が佐々木朗希相手に3安打の固め打ちを見せるなど、再び打撃好調。ソフトバンク周東も好調だったが盗塁は0だった。本塁打は日本ハム・レイエスとソフトバンク栗原陵矢の2、打点はレイエスの7、盗塁はロッテ高部瑛斗の2が最多だった。
〈投手成績5傑〉
北山亘基(日)1登1勝8回 責0率0.00PR2.62
宮城大弥(オ)1登8回 責0率0.00PR2.62
カイケル(ロ)1登7回 責0率0.00PR2.29
田嶋大樹(オ)1登1敗6.1回 責0率0.00PR2.08
エスピノーザ(オ)1登6回 責0率0.00PR1.97
日本ハム北山は8月24日のソフトバンク戦で8回零封勝利。同日、オリックスの宮城はロッテ戦で8回零封も勝ち星つかず。サイ・ヤング賞のロッテ、カイケルは23日のオリックス戦で7回零封も勝ち星つかず。救援では日本ハムの柳川大晟、楽天の則本昂大、西武アブレイユが3セーブ。日本ハム池田隆英が4ホールドを挙げた。