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大阪桐蔭「夏の甲子園初」の完封負けはなぜ起きた?…笑顔の小松大谷エースが語った勝因は「飛ばないバット」と「超ポジティブマインド」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byJIJI PRESS
posted2024/08/15 17:12
優勝候補の大阪桐蔭をわずか92球で完封してみせた小松大谷の西川大智。エースが語った意外な「勝因」とは…?
キャプテンの東野達が誇る。
「普段からゴロとか低い打球を打つことを徹底していれば、試合での凡打も生きてくると言いますか、進塁打でもチームのためになりますし。それが、相手に球数を投げさせたり、フォアボールを選べたりといったことにも繋がってくると思います」
大阪桐蔭との試合がそうだった。
初回から149キロを計測していたように快速球で圧してくる森に対し、小松大谷打線は三振をしても臆せずバットを出し、あるいはボールを選ぶ。5回まで79球を投げさせ、7回の先制点を挙げられたことで実証してみせた。
野手が森と平嶋から3点を奪う。そして、西川が強打の大阪桐蔭打線を5安打に抑え、わずか92球での完封を演じてみせた。
小松大谷が見せた快勝劇。その戦いは、夏は初めてとなる完封負けを喫した大阪桐蔭の西谷浩一監督が絞り出したひと言に集約されているようだった。
「しぶとく、いいチームでした」
西谷監督も脱帽の「超ポジティブマインド」
甲子園歴代トップの監督通算70勝の名将が称える“しぶとさ”には、小松大谷のポジティブすぎるマインドが大きく関係している。
エースのそれこそが、最もわかりやすい。
「自分は相手が強いほうが抑えられるって思っていて。そういうチームを抑えたら、ギャラリーが沸くじゃないですか。それが気持ちいいというか。無名から強いところを倒していくって、楽しいじゃないですか」
かくいう西川も、実は約2年前の22年秋に行った大阪桐蔭との練習試合で、本人いわく「4回を投げて9失点」の滅多打ちを食らっている。彼だけではなく、この頃のチームはまだ強者に立ち向かうだけのメンタルを育み切れていなかった。
変革のきっかけは23年の夏。石川大会準決勝で星稜に敗れたことだった。
監督の西野の回想だ。
「『気持ちで負けたら試合に勝てない』というようなことを言いました。だからといってチームに押し付けるようなことはなかったんですけど、本人たちが『心で負けない』と意識してくれるようになりました」
この転換期で生まれたテーマが、「気持ちで負けない」を意味する「心勝」だった。