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大阪桐蔭「夏の甲子園初」の完封負けはなぜ起きた?…笑顔の小松大谷エースが語った勝因は「飛ばないバット」と「超ポジティブマインド」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byJIJI PRESS
posted2024/08/15 17:12
優勝候補の大阪桐蔭をわずか92球で完封してみせた小松大谷の西川大智。エースが語った意外な「勝因」とは…?
東野はチームを束ねる役目であるため、「強いチームや力のあるチームと対戦しても『心で勝つ』ことを意識しています」と逞しく語るが、ほかの選手たちも西川のように前向き過ぎるほどにそれぞれ心を養っている。
ショートの山崎悠太にとっての「心勝」の刻み方はこうだ。
「自分たちはチャレンジャーですし、どんな相手でも強い気持ちを持って戦うのは当たり前で。それよりも『思いっきり楽しもう』っていうほうが強いですかね」
山崎に同調するように、内外野を守る石浦慈人も強者に向かう姿勢をこう話す。
「試合では苦しい展開になることはわかっているんで、負けを恐れないことが大事というか。強い相手に下剋上できれば嬉しいですし」
強い気持ち。チャレンジャー精神。自分たちにとってのパワーワードへの意識が強くなりすぎると、場合によってはプレッシャーに押しつぶされてしまうことだってある。
しかし、小松大谷の選手たちは違う。
山崎が「結果を願い過ぎたらダメなんで」と言うように、決して欲張らず、顔を上げ、今やれることをやる。それが実を結んだのが、夏の石川大会だ。準々決勝で金沢を撃破。準決勝では日本航空石川、決勝ではセンバツ出場校の星稜を倒し、3年ぶりの甲子園出場を決めたのである。
組み合わせ抽選でも「1回勝ったら桐蔭と戦える」
さらに甲子園での組み合わせ抽選会でも、小松大谷のポジティブマインドが発揮される。
初戦の相手が3季連続で甲子園出場中の明豊に決まり、勝てば次戦で優勝候補である大阪桐蔭とも対峙する可能性が浮上した。
「よっしゃ!」
チームが怖気づくどころか歓声を上げる。
「1回勝ったら、大阪桐蔭とやれるかもしれねぇから、絶対勝とうな!」
それまで甲子園で勝ったことがなかったチームは明豊を倒し、大阪桐蔭にも土をつけた。
発展途上のチームが強豪をなぎ倒していく。そんな下剋上の甲子園を小松大谷は突き進む。大舞台で披露するのは、無邪気なほどポジティブな野球である。
もしかしたら、これこそが相手にとって最大の脅威なのかもしれない。