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オリンピックPRESSBACK NUMBER
親友が突然がんを宣告され…「北口(榛花)さんを見ると森ちゃんを思い出す」池田久美子が語る、26歳で他界した砲丸投げ・森千夏との約束
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byAFLO SPORT
posted2024/08/09 11:02
2006年8月9日、26歳の若さで亡くなった森千夏さん。元同僚で、親交が深かった井村(旧姓・池田)久美子が思い出を振り返った
東京都江戸川区で生まれ育った森さんは、中学時代から砲丸投げを始め、2年生のときには全国大会にも出場。陸上の名門・東京高校では3年時にインターハイを制すなど頭角を現した。国士舘大学時代には、アジア選手権準優勝や日本選手権で優勝するなど、将来を嘱望されていた。大学2年の2000年には16m43で初めて日本新記録をマーク。7年ぶりの記録更新だった。
「本当に“砲丸命”という言葉がしっくりくるくらい、100%、砲丸に懸けていたし、砲丸愛に溢れていました」
井村さんは、森さんとの思い出を懐かしそうに語り出した。
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「出会いは中学3年の時に出場した大会の宿泊先でした。お風呂の脱衣所で突然、『私、森っていうんですけど、池田さんですよね? 会えて光栄です』と声をかけられて。よく話すようになったのは大学生になってからかな。中国の大会で一緒になってから、一気に打ち解けて話をするようになったんです」
「姉妹のような何でも言い合える存在」
福島を拠点にしていた井村さんと、東京の森さん。2人は大学卒業後、2003年に実業団スズキに入社することになりさらに距離が縮まった。
「お互いに練習拠点は離れていたんですが、本社のある浜松で月に一度行うミーティングに参加する時、東京-浜松間の新幹線の移動中や寮で1カ月分溜まった話をして(笑)。競技のこと、食べ物のこと、恋愛話……。姉妹のように本音で何でも言いあえる存在だったし、お互いに相手の前でだけは自分をさらけ出していたと思います。森ちゃんが隣にいることが当たり前の日常でした」
お互いに切磋琢磨しながら、会えば、何時間も女子トークをしていた2人。そんなたわいもない時間が楽しくもあり、貴重だった。
だが、アテネ五輪前の2004年春頃から森さんの体調があきらかに悪くなっていることは井村さんも薄々感じていた。