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「俺、負けたわ…」男子100m金ライルズがゴール後に誤認! わずか5センチが命運を分けた五輪史上最大の激戦…サニブラウンも「レベルが全然違う」
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byGetty Images
posted2024/08/08 11:15
パリ五輪男子100m決勝レースは1位から8位までが0秒13差という史上稀にみる大激戦。金メダル争いは写真判定の結果、わずか0秒005差でライルズ(米国)が制した
60mでトンプソンは隣のカーリーに並ばれて硬くなったのか、タイムがわずかに落ちたがなんとか踏ん張った。90mではトンプソンが0秒01先行していたが、60mすぎに最高速度を記録した後に減速を僅かにとどめたライルズが最後に追い込み、レースを制した。
1着 ライルズ(米国) 9秒784(0.178)自己ベスト
2着 トンプソン(ジャマイカ)9秒789(0.176)
3着 カーリー(米国) 9秒81(0.108)
4着 シンビネ(南アフリカ) 9秒82(0.149)南ア記録
5着 ヤコブス(イタリア) 9秒85(0.114)
6着 テボゴ(ボツワナ) 9秒86(0.178)ボツワナ記録
7着 ベナーク(米国) 9秒88(0.163)
8着 セヴィル(ジャマイカ) 9秒91(0.171)
※タイム右のカッコ内はスタートの反応タイム
その壮絶さは、メダルを逃した選手たちの表情が物語っていた。スプリントは格闘技のようにフィジカルに殴り合うわけではない。しかし報道陣の前に現れた彼らは打ちのめされ、歩くのもやっとというような虚な表情だった。
サニブラウン「レベルが全然違う」
9秒90を切っても、自己ベストを出してもメダルに届かないのか。
準決勝で9秒96の自己ベストを出しながら決勝を逃した日本のサニブラウンは「9秒95を切るくらいじゃないと決勝に行けないと思っていたが、レベルが全然違う。五輪は違う。自分が前進していても、周りはもっともっと前進している。初めて世界陸上に出たのが2015年で9年間もこの競技をやっているが、いつまで競技人生が続くか分からないし悠長なことは言ってられない。差を縮めていかないといけない」と神妙な表情で話していたが、メダルを逃した選手たちも似たような心境だっただろう。そしてその悔しさを次のレース、世界大会にぶつけるはずだ。
今回はライルズが金メダルを獲得したが、ボルトのように絶対的に突出した存在とは言えない。
男子スプリント戦国時代はまだまだ続いていく。