バレーボールPRESSBACK NUMBER
男子バレー涙の円陣…小野寺の手招き、小川の頭をポンポン「史上に残る壮絶な試合だった」パリの“観客席”で見た夢のような景色とジャポンコール
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2024/08/07 11:02
逆転負けを喫したものの、序盤は強豪イタリアを圧倒したバレーボール男子日本代表。パリの会場には“ジャポンコール”が響いた
「予選ラウンドの時は不安そうな顔だったんですけど、今日は朝のミーティングの時からもう全然、目が違いました。吹っ切れた感じでした」
第1セット6-7から、石川が多彩な持ち技を駆使したスパイクで3連続得点を奪い9-7とリードすると、セッターの関田とガッチリ抱き合った。関田の中で「今日は祐希に託そう」と腹が決まったのかもしれない。
勝負所や、ここでラリーを取ればチームが乗れるという場面で、関田は石川に託し、エースは決め切り自信を取り戻していく。豪快にサービスエースを奪い、気迫あふれる雄叫びで周りを巻き込む。誰もが待ち望んだ、“これぞ石川祐希”という姿で、チームを牽引した。
日本は個々が役割を果たして2セットを連取し、王手をかけた。第3セットは終盤追い上げられるが、石川が連続でスパイクを決め24-21と引き離し、ついにマッチポイントを握った。
あと1点で準決勝進出。観客は総立ちになり、試合が決まるその瞬間を見守った。もちろん筆者も、ついにその時が来たのだと身震いしながら立ち上がった。
そこからイタリアがサイドアウトを取り24-22。次だ、と会場のボルテージはもう一段高まった。
しかし3枚ブロックの指先を狙った石川のレフトスパイクはわずかに浮いてアウトとなり24-23。さらにイタリアのセッター、シモーネ・ジャネッリのジャンプサーブが石川と山本の間に突き刺さり24-24。デュースに持ち込まれた。
誰もが勝利を信じた第3セット
この瀬戸際でこのサーブを打てる。それが五輪のメダル争い常連国の強さなのか。
立ち上がっていた観客はおあずけをくらい、ゆっくりと腰を下ろした。
その後イタリアのブロックや強力なサーブに押され25-27でセットを落とした。
「勝ちを見ちゃったかもしれないですね。行けるとは思っていました、完全に。あの点差(24-21)でしたから」
ベンチにいた深津コーチはそう振り返った。
まだセットカウント2-1。だが、3セットで仕留めておかなければならない相手だった。イタリアはセットを追うごとにブロックとディフェンスで日本の攻撃に対応。好守備を連発し、決定率を抑えられた。
しかし日本も「粘り負けだけはしない!」と懸命に応戦。石川や高橋藍も体を投げ出して何度も好守備を見せ、西田有志や高橋のサービスエースで打開しかけるが抜け出せず、第4セットも奪われた。