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男子バレーの窮地を救った”最高の出木杉君”「もっとガツガツしてもいいのに…」大塚達宣(23歳)から漂い始める覚醒の予感とは?
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byYohei Osada/AFLO SPORT
posted2024/08/04 11:04
アメリカ戦で途中出場し、試合の流れを変えた大塚達宣(23歳)
大塚はパンサーズジュニア出身で、洛南高校でも早稲田大学でもエースとして何度も日本一を経験。高橋藍(サントリーサンバーズ大阪)と同じく2020年に初めて代表に招集され、2021年の東京五輪に出場した。攻守すべてをハイレベルにこなすオールラウンダーで、日本のアウトサイドヒッターの中では恵まれた194cmの高さもある。大学3年時からパナソニックに加入しVリーグで腕を磨いてきた。
もっとガツガツしてもいいのに
だが日本代表ではずっと控えの立場だった。主将で絶対的なエースである石川と、東京五輪後イタリアに渡り驚異的な成長を遂げた高橋のスタメンが揺らぐことはなかった。
もちろん悔しさはあったはずだが、大塚はあまりそれを表に出すことはなかった。
「どんな場面でも任された役割をしっかり果たしたい」
「途中で入って雰囲気を変えることが自分の役割」
達観したベテラン選手のようにそう繰り返し、実際にその難しい役割をきっちりと果たしてチームに貢献してきた。劣勢でも、大塚がコートに入って明るくポジティブなオーラを発し、堅実なプレーを続けるうちに自然と流れが変わる。それは誰にでもできることではない。
ただ、もっとガツガツしてもいいのにと、物足りなさを感じることもあった。それだけのポテンシャルがあるのだから。
今年のネーションズリーグ第2週の福岡大会を迎える前にもこう話していた。
「コートに入る時間を長くしたいというのはもちろんありますけど、もう、絶対スタートは祐希さんと藍が基本ベースだと思う。東京五輪が終わってから3年間、パリに向けて作ってきたチームなんで。
そこに対して自分は、2人に何かあった時とか、途中で入って、チームを自分の力で勝たせるというよりは、何事もなかったようにうまく進める。そういうことができるという信頼をしっかり勝ち取りたいという気持ちがずっとあります。スタッフ陣に『大塚はやっぱり途中出場で出たらしっかり仕事してくれる』とか『安定して途中で使えるね』と思ってもらえたら。メンタル的には本当に難しいですけどね。(選考がかかる)今年は特に(苦笑)」
だが第3週のカナダ戦で高橋が左足首を痛めたため、予選ラウンドの残り2戦とファイナルラウンドは大塚が石川の対角で先発起用された。献身的なサーブレシーブと守備で石川の負担を減らしつつ、高い打点からの攻撃でも貢献。日本の銀メダル獲得の力となった。