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男子バレーの窮地を救った”最高の出木杉君”「もっとガツガツしてもいいのに…」大塚達宣(23歳)から漂い始める覚醒の予感とは?
posted2024/08/04 11:04
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Yohei Osada/AFLO SPORT
ああ、これほど頼りになる出木杉君はいない。こんな出木杉君なら大歓迎だ。
8月3日の早朝に行われたパリ五輪・予選ラウンド最終戦のアメリカ戦、第3セット。日本代表を救った大塚達宣(大阪ブルテオン)の姿に、感謝と懺悔の気持ちがわいた。
1勝1敗(勝ち点4)で最終戦を迎えた日本は、敗れたとしても1セットを取れば準々決勝進出が決まるという状況だった。だが1、2セット目はアメリカの強力なサーブとブロック、多彩な攻撃に圧倒されて大差でセットを連取され、崖っぷちに追い込まれた。
しかし本調子でない石川祐希(ペルージャ)に代わり第3セットのスタートから入った大塚が、アメリカのブロックを利用して巧みにスパイクを決めたり、リバウンドを取って攻撃を仕切り直すなど、日本がやるべきプレーを体現して流れを引き寄せた。リードしたことで今度は日本のサーブが活き、大差で第3セットを取り返し、準々決勝進出を決めた。
「良くも悪くも“出木杉君”なんですよね」
今年のネーションズリーグ前、元日本代表の福澤達哉氏(パナソニックグループ広報・大阪ブルテオンアンバサダー)にインタビューする機会があった。そこで大塚の話になった際、福澤氏はこう話していた。
「良くも悪くも“出木杉君”なんですよね。例えば海外を経験したメンバーは、競争社会の中で抜け出すために、どこかで必ず我を通さないといけないところがある。でも大塚の場合は受け入れちゃうんです。受け入れて、『自分が今できることはなんだろう?』と考える。そのプロセスはすごく大事なんですけど、それが早すぎるんですよね(苦笑)。もうワンクッション、『なんでオレ使わへんねん!』ぐらいの我が出てくると、さらに変わるかもしれません」
洛南高校とパナソニックパンサーズ(今季から大阪ブルテオン)の先輩で、日本代表で共にプレーした間柄だからこその愛ある言葉だったが、その表現が妙に腑に落ちた。