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《女子ボクシング性別騒動》「彼女の態度は恥」棄権→挨拶拒否→号泣イタリア人もケリフも…誹謗中傷と「Webでの識者コメント」にえぐられる心
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAnadolu/Getty Images
posted2024/08/05 11:00
女子ボクシング、アルジェリア代表のイマネ・ケリフ。性別と競技性について、考えさせられる事象が起きている
25歳の彼女は登録上、生来の女性選手として一貫したボクシングキャリアを続けてきた。
IOCが全競技の統括団体にトランスジェンダー選手の五輪参加についてガイドラインを策定するよう求めたのは昨年11月のことだ。
テストステロン値が女性平均値より著しく高かったため、昨年のIBA(国際ボクシング協会)世界選手権出場が認められなかったケリフに、IOCが“インターセックス”選手としての参加資格を与えたときから、今回の論争は避けられなかった。
ケリフ本人には抗議や非難が殺到しているという。たまりかねたアルジェリア五輪委員会は「複数の外国メディアから出された、我々の代表選手イマネ・ケリフに対する虚偽の情報や誹謗中傷めいた攻撃的な表現について厳重に抗議する」声明を出した。
ケリフ自身もこの問題で長く…
パリ五輪が生み続けている禍根の一つにカリーニ棄権事件が加わった。ジェンダー問題が厄介なのは政治問題とも密接に結びついているからだ。
イタリア代表チームのTDレンツィーニは声を落とし、重い言葉を発した。
「競技の当事者である我々が(ジェンダー問題に)判断を下すのはとても複雑で難しい。ケリフ自身もこの問題で長く悩まされることになるだろう」
カリーニが20秒足らずで青コーナーに戻ってきたとき、コーチはせめて第1ラウンドだけでも、と問うてみた。だが、彼女は「もう続けられない」とだけ答えたという。