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プロ野球PRESSBACK NUMBER
「夜の盗塁王と呼ばれた男」高橋慶彦の“モテモテ伝説”がスゴかった「野球と私、どっちが大事なの?」「野球に決まってんじゃん」本人が語る真相
text by
長谷川晶一Shoichi Hasegawa
photograph bySankei Shimbun
posted2024/08/01 11:05
球界でも指折りのプレイボーイとして知られた高橋慶彦。「夜の盗塁王」と呼ばれた現役時代の“モテモテ伝説”について本人が語った
79年、33試合連続ヒットの日本記録を樹立
プロ4年目となった78年には、開幕から「一番・ショート」に抜擢され、レギュラーに定着。打率.302を記録して、ベストナインにも選出された。さらに翌79年には、現在まで破られていない33試合連続安打の日本記録を打ち立てる。
「18年間のプロ生活最高の思い出と言えば、この記録かな? みんな、“記録は破られるためにある”とか、“早く僕の記録を破ってほしい”とか言うけど、そんなのはウソ(笑)。やっぱり、記録は破られたくないよ。もしも破られそうになったら、オレはバックネット裏の席を確保すると思うね……」
少しの間をおいて、慶彦はいたずらっぽく笑った。
「……そいつが打席に入るたびに、“次はカーブが来るぞ……、いやストレートかな?”ってヤジり倒して混乱させるね(笑)」
79年は慶彦にとって、名実ともにスター選手の仲間入りを果たしたシーズンとなった。55盗塁を決めて盗塁王のタイトルを奪取し、120試合に出場して打率.304を記録して、チームのリーグ優勝に貢献する。さらに2年連続でベストナインにも選ばれた。
後に「江夏の21球」として語り継がれることになる近鉄バファローズとの日本シリーズでは、全7試合で27打数12安打、打率.444を記録。対戦成績4勝3敗で、カープ初の日本一に貢献してMVPに輝いた。
「でも、『江夏の21球』のことはほとんど覚えていないんだよね。頭が真っ白になるぐらい緊張していたから。覚えているのは、ノーアウト満塁の大ピンチ。“ここに飛んでくるなよ”っていう思いだったな。いや、“オレを代えてくれ”というのが正直なところかもしれないね。決して守備だって上手な方ではなかったけど、古葉監督は絶対に交代させないということもわかっていたので、“とにかく飛んでくるな”という思いが強かった」
カープのリリーフエース・江夏豊は、この場面を無失点で切り抜ける。そして、この緊迫した場面は、山際淳司の手によって、『江夏の21球』と題されて、後世に語り継がれることになる。
チーム初となる日本一、球史に残る名シーン、慶彦もまた歓喜の瞬間の中にいたのだ。
<前編とあわせてお読みください>