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プロ野球PRESSBACK NUMBER
“夜遊び大好き”高橋慶彦「野球があるから女の子にもモテる」なぜ球界屈指のスター選手に? 落合博満を上回る記録も「80年代は慶彦の時代だった」
text by
長谷川晶一Shoichi Hasegawa
photograph byKYODO
posted2024/08/01 11:04
スピード感あふれるプレーでファンを魅了した高橋慶彦。「誰よりもよく練習し、よく遊んだ」その華やかな現役時代とは
「野球があるから遊べて、女の子にもモテる(笑)」
広島東洋カープの一番打者として、正遊撃手として、グラウンドを所狭しと駆け回った。通算三度の盗塁王に輝き、疾走感あふれるプレースタイルは多くの野球ファン、特に女性ファンの心をわしづかみにしていた。本人が「あの頃」を振り返る。
「あの頃はたくさん遊んだよ。遊ぶために野球をやっていたと言ってもいいかもしれない。でも、本業だけは絶対に忘れんかった。だって、野球がすべてを生んでいるんだから。《野球》という大きな幹があるから自由に遊べて、女の子にもモテるんだから(笑)。それを忘れちゃいけないよね。それはいつも思っていたよ」
本人の言葉にあるように、プロ野球界では今でも「慶彦ほど練習をした選手はいない」という言説が流布している。
「確かに練習はしたけど、特別すごいことをしたわけじゃないよ。小学校の頃に時間割ってあったでしょ。あれと同じ。食事の時間、練習時間、寝る時間をきちんと決めていけば、自然と遊ぶ時間もできるんだよね。それはつまり、“グレーゾーンをなくすこと”なんだよね。今の若い選手たちは、気がつけばケータイをいじっているでしょ。でも、それって何の役にも立たないグレーゾーンの時間なんだよね。そんな時間をなくせば、遊ぶ時間なんていくらでも作れるはずなんだけどね」
スマホで動画を見る、マンガを読む、ゲームをする。気がつけばあっと言う間に何時間も経過していた……。多くの人が、そんな経験をしているはずだ。しかし、こんな「グレーゾーン」をなくせば、人は一大事を成し遂げることもできる。
慶彦にとっての「一大事」とはもちろん、「左打ちを習得すること」だった。
右投げ右打ちで入団した慶彦は、持ち前の俊足を生かすためにスイッチヒッター転向を命じられる。一から始めた左打ち。どのような心構えでモノにしたのかを尋ねると、逆に質問された。
「もしも、右利きを左利きに変えるとしたら、どうします?」