名古屋市工芸高で大学生が練習する機会があり、愛知県内の強豪校を率いる監督や愛知学院大学の植田和次監督が体育館を訪れていた。そこで190cmを超えていた晶大の姿に関係者の目が留まった。ブロックのステップを見て、できると判断した植田監督が志水監督に大学で獲得の意思を示した。

　純子さんにとっては、まさに青天の霹靂。

「志水先生から電話が来て『愛知学院大の先生から話があるから、時間をつくって学校に来てもらえませんか？』と。この人たち、何を言っているの？って。全く意味がわかりませんでした」

　純子さんと晶大の前に、植田監督と高校の担任、そして志水監督が座った。資料を差し出され、将来の展望を含めた獲得の意思を伝えられた。

「バレーで大学に行かせるなんて考えてもいなかったから、本当にこの人たち何？って思っていました。ずいぶん後になって、植田先生からも『お母さん、あの時“何、この人たち”っていう顔をしていたよね』って言われたぐらいで（笑）」

　親としては不安で仕方なかったが、息子が「やる」と決めたなら、あとは応援するだけ。晶大は高3秋に国体の愛知県選抜に選出され、卒業後は愛知学院大へ進学をすることを決めた。

　親元を離れて寮生活をする息子に「ご飯がおいしくない」と聞けば、試合を見に行くたびに大量の飲み物やカップ麺、ごはんに乗せて食べられるレトルト丼の具材を大量に持って行った。

　とはいえ、純子さんも晶大がチームの即戦力になるとは思っていなかった。大学3年生になる頃に少し試合に出られたら十分だ――しかし、早くから試合に出場し、そしてそれ以上にいい意味で裏切られたのは、晶大が愛知学院大に入学してからまさに3年目の出来事だった。

（後編に続く）

#4に続く

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