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「石川祐希に悲壮感は一切なかった」男子バレー現地記者が見た、“重苦しい空気”を変えたキャプテンの言葉「自分たちのために戦う」
posted2024/07/28 17:00
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph by
Naoya Sanuki/JMPA
「金メダルを本気で目指す」
パリ五輪前、バレーボール男子日本代表のキャプテン、石川祐希はきっぱりとそう言いきった。
もちろん、それを実現することが簡単ではないことも、十分すぎるほど理解した上での発言だ。
「メダルのチャンスはありますが、みなさんが思っているほど簡単ではないし、必ず勝てる保証もない。今まで以上に結果は出ていますが、それが(パリで)結果につながるかは関係ない。僕たちのバレーボールをするだけ。地に足をつけないと足元をすくわれてしまうので、現実を見て、取り組んでいきたいです」
今年、ネーションズリーグで史上初めて決勝に進出し、金メダルを掴むためのイメージはできた。強豪国に対しても勝てるイメージも持てた。
そして、始まった自身2度目となる大舞台での戦い。
52年ぶりとなるオリンピック金メダルを狙う世界ランキング2位の日本は、初戦で39歳のエース、グロゼル率いるドイツと対戦。第1セットを奪われたものの、第2、3セットと連取。しかし、大接戦を繰り広げた第4セットを奪われ、最終セットは12―15と力尽き、セットカウント2−3で逆転負けを喫した。
慣れない午前9時のスタート
誰もが初戦の難しさを痛感する試合だった。
オリンピックには魔物がいる−−。
そんな言葉が頭をよぎった。
慣れない午前9時スタートの試合。オリンピックの初戦はかたくなり難しい状況になることは選手たちも十分に理解していた。その中でどういった解決策を見出し、プレーするか。逆にそれを意識しすぎたがゆえにこの試合では要所でミスが多く出てしまった。