熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
「足首がひどく腫れて…」メッシ涙も依存脱却アルゼンチン、“悲惨な弱さ”のブラジル…なぜ「3年前は真逆」南米2強の明暗が反転したか
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byBuda Mendes/Getty Images
posted2024/07/20 11:01
コパ・アメリカ優勝メダルをかけるメッシ。右足首の負傷で無念の交代となったがチームが奮起して連覇を果たした
カタールW杯決勝のPK戦でも大活躍したGKエミリアーノ・マルティネス(アストンビラ)が、エクアドルの1人目のキックを驚異的な反応で止める。アルゼンチンの2人目が決めると、エミリアーノはエクアドルの2人目もストップ。その後、アルゼンチンが3人続けて決め、4-2で勝ち上がった。
準決勝では再びカナダと対戦し、またしても2-0で一蹴した。
この大会で、メッシの得点はこのカナダ戦の1点だけ。スペースを切り裂くスルーパスなどで決定機を作りはしたが、決して万全の体調ではなかった。しかし、準々決勝と決勝で、アルゼンチンは他の選手がエースの不調をカバーして南米の頂点に着いた。
2021年のコパ・アメリカ決勝、マラカナン・スタジアム(リオ)で宿敵ブラジルを倒して以後、アルゼンチンは2022年ワールドカップ(W杯)、今回のコパ・アメリカと国際大会を3大会連続で制覇している。これは天才マラドーナの時代にもなかった快挙であり、黄金時代を築いていると言っていいだろう。
2016年には“メッシ代表引退宣言”するほどだったのに
しかし、このような状況は3年前までは全く想像できなかった。
アルゼンチンは、1993年にコパ・アメリカを制覇してから2021年まで実に28年間、国際大会で勝てなかった。この間、メッシら選手は地元メディアと国民から罵声を浴び続けた。
そして2016年、最悪の事態が起きた。
コパ・アメリカで、前年に続いて決勝で延長、PK戦の末にチリに敗れて準優勝。PK戦でキックを失敗したメッシは「もう二度と代表でプレーしない」と言明したのである。
だがその後、エドガルド・バウサ監督に説得されて代表に復帰。2018年W杯終了後、40歳の若さで暫定監督となったリオネル・スカローニ(その後、監督に昇格)がメッシを核に据えてグループを統率し、攻守両面で90分間、ハードワークをするチーム――ただしメッシだけは守備を免除されているが――を作り上げた。
とはいえメッシも2026年W杯出場は「体調次第」
とはいえ、2026年W杯へ向けて不安要素がないわけではない。
これまでチームを支えてきたメッシは37歳、MFディ・マリア(ベンフィカ)、CBニコラス・オタメンディ(ベンフィカ)がともに36歳となった。さらにディ・マリアはこの大会限りでの代表引退を発表している。ただしスカローニ監督は「彼はチームにとって非常に重要な選手。引き続きプレーしてくれるよう説得する」とも語っているが。
数々の伝説を残してきたメッシも、年齢とは無関係とはいえない。