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ボクシングPRESSBACK NUMBER
那須川天心が“KOできない”批判に本音「掌を返すならいまだぞ、と」なぜ賛否両論を楽しめる? 世界王者・武居由樹との対戦は「いずれ必ず…」
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2024/07/17 11:03
7月4日の公開練習で汗を流す那須川天心。20日のプロボクシング4戦目でWBA世界バンタム級4位のジョナサン・ロドリゲスと対戦する
「いろいろなものが消費されまくっている」
天心はわかっている。いっぱしの選手になるためには、想像以上の時間と努力を要することを。
「人生って、そういう作品だと思っていますから。変なミスもできないので、そこは本当に今まで通り、地道にやり続けないといけない。たぶん世間のニーズとは逆のことをやっていますね」
ウェブメディアやSNSが発達したことで、ボクシングや格闘技の試合レポートは翌日の新聞や数週間後に発売される専門誌を待つのではなく、リアルタイムで享受するものになった。便利になったといえばその通りだが、ひとつひとつの試合が記憶に残りにくい、というのもまた確かだろう。言い換えれば、ファンが何日も語りあえるような「我が心の名勝負」が生まれにくくなっているのだ。
天心は「もういろいろなものが消費されまくっている」と危機感を募らせる。
「ファンに観たいと思われたら、すぐに組む、みたいな。でも、そう簡単に消費されてもね……。以前から僕は『気長に待ってて』と主張しているんですけどね(笑)」
では、自身の支持者からも、「すぐに次のフェーズに移行させよう」という流れを感じることがあるのではないか。
「そうなんですよ。だから本当に(自分が発したメッセージの)文脈をしっかりと読み取って、考える力をつけてほしい。単に“信者”みたいになってほしくないんで」
受け身のまま次々に消費するのではなく、選手が発するメッセージも読解しながらじっくりと試合を味わってほしい。令和のエイリアンは、スポーツのアナログな愉しみ方をもう一度世の中に提案しようとしているのだろうか。
<続く>