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大谷翔平30歳“スイング超進化”が200本塁打成績で判明「投手・大谷はリハビリ中だが…」エンゼルスとドジャースの6年半で打球速度も弾道も 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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posted2024/07/15 17:00

大谷翔平30歳“スイング超進化”が200本塁打成績で判明「投手・大谷はリハビリ中だが…」エンゼルスとドジャースの6年半で打球速度も弾道も<Number Web> photograph by AP/AFLO

メジャー通算200号本塁打を放った大谷翔平。シーズンごとのホームラン成績の詳細を見ると、スイングの進化を感じ取れる

〈ロサンゼルス・ドジャース時代〉
☆2024年 29本40打点(1.38点)、Exit.V 119.2(3位)

・左投手7本 右投手22本
・フライ28本 ライナー1本
・左翼3本 左中間2本 中堅7本 右中間10本 右翼7本
(左5本 中7本 右17本)
・ソロ18本 2ラン11本 3ラン0本 満塁0本
・打順 1番10本 2番19本(先頭打者3本)

 大谷は、入団時は投手としての起用にウエイトがかかっていて、打者としては下位を打つことも多かった。しかし打撃の実力が認められて、次第にMLBの最強打者の打順である2番や3番を打つことが多くなった。

打者・大谷がはっきり進化した「2021年の打球速度」

 当初は、打球速度を示すExit.VはMLB打者で上位ではあったが、トップクラスではなかった。打者・大谷がはっきり進化したのは、1回目のトミー・ジョン手術から完全復活した2021年のこと。この年、Exit.Vは一気に3位にまで上昇する。この数値は近年、ヤンキースのジャンカルロ・スタントンとアーロン・ジャッジがトップを争っているが、ここに割って入った。

 この時期、大谷はオフに「ドライブライン」などのバイオメカニクスの専門施設で自分のスイングを徹底的に分析したとされるが、その分析の上に立って「打球速度を上げる」ための打撃改造に取り組んだのだろう。この年44本塁打、MVPを獲得。打者・大谷にとって、2021年が決定的な分岐点になっている。

 2021年は右方向(右翼、右中間)の本塁打が33本(72%)と、引っ張る打撃が目立った。しかし翌22年以降は右方向は50%台となり、中堅よりも左を意識した本塁打も増えている。そしてExit.Vは、ずっとトップクラスを維持するとともに、平均速度は2024年が最速となっている。

ライナーの本塁打が1本しかない衝撃

 今季の特色を見てみると、ライナー性の本塁打がタイガース戦で放った29号の1本しか出ていないこと。ライナー性の本塁打は「ヒットの延長線」と言われるが、弾道を踏まえると、今年の大谷の意識は〈最初からスタンドインを狙って打球を打ち上げている〉のだろう。

 まさに「フライボール革命」を体現するような打撃。今、投手・大谷は、二度目の右ひじ靱帯再建手術を受けてリハビリ中のはずだが、その期間も打者・大谷は進化している。その事実は、あらためて大谷という選手の特異性を示している。

 死球でIL(負傷者リスト)入りしたベッツの復帰までの間、大谷は1番を打つことになる。それもあって1本塁打当たりの打点はキャリア最低ではあるが、チームでの役割を考えれば、これには目をつむるべきなのだろう。その代わり先頭打者本塁打を3本も打っている。

 当然ながら、200本はまだ「通過点」だ。過去、MLBで200本塁打を記録した打者は375人もいる。30歳の大谷翔平は、ここからどれだけのアーチを我々に見せてくれるのか、楽しみは尽きない。

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