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“天才少女”と呼ばれた水泳界の逸材「玄関を開けたらカメラが…」高校1年生で五輪出場、今井月(23歳)が注目の裏で抱いていた“責任感”
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byTsutomu Kishimoto/PICSPORT
posted2024/07/22 11:01
若くして注目を浴び、日本代表としてリオ五輪に出場した競泳の今井月(現在23歳)
だからこう語る。
「中学生のときは、水泳は楽しいという感じではなかったかもしれないですね。ただ速くならなきゃという気持ちでやっていました」
高校1年生で手にした“リオ五輪への切符”
4月、高校1年生になった今井は日本選手権を迎える。100、200m平泳ぎ、200m個人メドレーにエントリー。主軸とする200m平泳ぎは激戦区で、前年の世界選手権金メダルにより、すでに渡部香生子が代表に内定。残るは1枠だが、数々の実績を持つ金藤理絵、ロンドン五輪で銀メダルを獲得した鈴木聡美ら強豪がひしめいていた。
最初の種目100mを4位で終えていた今井は、その200mで3位。リオへの切符は手にすることができなかった。リオ行きの切符は本格的に取り組み始めて間もない200m個人メドレーに懸けることになった。
「絶対に決めてやる。死んでもいいと思って臨みました」
最初のバタフライと続く背泳ぎを終えた段階では最下位の8位。だがここから爆発的な泳ぎを見せる。平泳ぎで4人をかわすと最後の自由形でも2人抜き、結果、2位。派遣標準記録も切り、最後の最後に代表の座を手に入れた。周囲の変化に戸惑い、重圧を感じながらもそれに負けることなく、結果を残したのである。
「なんでプレッシャーをはねのけられたんでしょうね……。プライドがあったのかな。神様も味方してくれたと思います」
リオ五輪後、さらに広がっていった未来
迎えたリオデジャネイロ五輪では準決勝15位、決勝に進めずに終えた。
「海外で合宿したり、海外で試合に出る難しさをすごく感じたので、これから日本代表に入って世界水泳などに出るときには、必ずベストを更新したり、決勝には残りたいと思って帰国したのは覚えています」
翌年の世界選手権200m個人メドレーでは、メダルに0秒28届かなかったものの、2分9秒99の自己ベストで5位入賞を果たした。リオからの着実な成長を記録と結果に残し、未来はさらに広がったようだった。
だが順調に描いてきた上昇曲線は、ある頃から変化していくことになる。
《インタビュー第2回に続く》
(撮影=岸本勉/PICSPORT)