野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
「アメリカで通用する投手の条件は…」元巨人V9戦士・高田繁が語るMLBとの出会い「レベルが全然違う。大谷翔平なんて考えられない」
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byJIJI PRESS
posted2024/07/10 06:00
引退後は日ハムで監督&GMも務めた高田繁氏(左)。巨人でチームメイトになった張本勲氏は浪商高校の5年上にあたる高校の先輩でもあった
――球の質ということですね。
高田 山口高志なんて特にマウンドが近く感じられたよ。いい時の江川卓のストレートも、うなりをあげてきた。江夏(豊)もドーンと速い球が来るけど豪速球じゃない。その代わりコントロールが抜群だ。外の出し入れだけで勝負出来て、変化球がストーンって落ちる。あれも他にない名投手だったね。
――ちなみに高田さんが現役時代に対戦したメジャーの投手で忘れられない人はいますか?
高田 おる。とんでもないストレートやったわ。人生で唯一バッターボックスに入って恐いと思った投手がいる。
――気合の塊である高田さんを震え上がらせた投手なんてどんな豪傑なのでしょうか。
高田 カージナルスのボブ・ギブソンだよ。1968年の秋に来日して後楽園で対戦したんや。
――殿堂入りの右腕ですね。1968年ってボブ・ギブソンが22勝で13完封、防御率が1.12という近代MLBでダントツ1位の伝説的な記録を出して、MVPとサイ・ヤング賞を獲った年じゃないですか。
高田 そうそう。あの年のカージナルスはすごいスター軍団だったんや。
――ちなみにこの年高田さんはルーキーで日本シリーズMVPを獲得後、10月25日の第1戦で1番打者としていきなりボブ・ギブソンからホームラン打ってますね……打ってるじゃないですか。
高田 いや、第1戦は調整不足や。あの頃の日米野球なんか半分お遊びみたいなもんだから、調整もしてこないしまだ時差ボケの中で野球やってるようなもんなのよ。ボール見ても速いけど打てるなって思ったもん。ただ、その4日後よ……仙台でまた対戦するんやけどな。
「身体に来たら逃げられない」という恐さ
――ボブ・ギブソンが、時差ボケから目覚めたわけですね。
高田 あぁ~もうとんでもなかった。全然っ、もう全ッ然、別人や! 手も足も、長く見えてね。なにがすごいって、恐いんや。もし抜けて、身体に来たら逃げられない……とバッターに想像させてしまう恐さがあった。
――ギブソンは投球フォームも投げ終わりに一塁側に極端に倒れてきますもんね。
高田 そうそう。またデカいんだよ。ビューッと投げて倒れてきてな……あれは打てん。日米野球ではライジングボールのトム・シーバーとも対戦したし、その後もいいピッチャー、すごいと思ったピッチャーはたくさん見て来たけど、ボールの質でいえばこのボブ・ギブソンがナンバーワンやな。