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プロ野球PRESSBACK NUMBER
巨人→西武“電撃トレード”直前の葛藤「本当に燻ってました…」今年30歳の大谷翔平世代・松原聖弥が続ける“育成ドラフト”からの下剋上
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byJIJI PRESS
posted2024/07/05 11:01
巨人から西武に電撃トレードとなった松原聖弥
ジェラルド・パーラ、エリック・テームズ、スコット・ハイネマン……。確かに当時の外国人外野手は軒並み途中帰国していた。とはいえ、そのチャンスをしっかりと掴みとったのは松原自身の力だろう。一軍戦に出るようになったこの時期、「別の世界の人だと思っていた」という同学年の選手たちと初めて交流するようになる。
「僕のことなんてみんな知らないですからね。本当にそんなレベルの経歴です。なんか自分からはあんまり話しかけに行けなくて……。内野手なら対戦相手の選手と塁上で話したりするけれど、外野手って距離があるんですよ(笑)。でも鈴木誠也とか西川龍馬とかは話しかけてきてくれた。そこからちょっと喋るようになりました。考えてみたらこの世代って凄いですよね。大谷、誠也、藤浪(晋太郎=阪神)、近本(光司=阪神)もいて佐野(恵太=DeNA)も……。“同級生”で選抜チームを組んだら強いなぁって思いますよ」
無名だった松原が、小さなきっかけを掴んでプロになり、支配下を勝ち取り、一軍選手になった。それは「大谷世代」の一員となった瞬間でもあった。
今年30歳の“電撃トレード”「ゼロからのスタート」
ブレイクを果たした21年シーズン以降、松原は再びスランプに突き当たっている。22年は打撃不振などで一軍出場は50試合。23年は21試合で12打数無安打とさらに低迷した。正念場と覚悟を決めて挑んだ今シーズンは開幕2戦目の阪神戦で代走から出場し、シーズン初打席で初安打。実に584日ぶりに「H」マークを灯したが、9試合に出場してその後は二軍暮らしが続いていた。
「(ブレイクした20、21年は)何も考える余裕がなくて、失うものもない中でがむしゃらにやっていた。そこから色々と経験していくうちに、余計なことを考えるようになってしまっていました。良かった時のことに囚われていた部分もあって、ここ2、3年は本当に燻っていました」
そんな日々に突然訪れた電撃トレード。巨人から西武へ。リーグも環境も大きく変わることで、松原は再びハングリーな境地に立ち戻れた。
「一番の目標は、もう一度レギュラーという形を取り返すこと。ゼロからのスタートになると思うので、どんな場面でも全力でアピールしていきたいと思います。30歳を前にした今が、本当に自分の大きなターニングポイントだと思っています。これから先、一日でも長く野球を続けられるように、まずこのチャンスをしっかり掴み取りたいです」
下剋上の物語にはまだ、続きがあるはずだ。
《インタビュー第1回も公開中です》