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プロ野球PRESSBACK NUMBER
巨人→西武“電撃トレード”直前の葛藤「本当に燻ってました…」今年30歳の大谷翔平世代・松原聖弥が続ける“育成ドラフト”からの下剋上
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byJIJI PRESS
posted2024/07/05 11:01
巨人から西武に電撃トレードとなった松原聖弥
18年11月8日、巨人とMLBオールスターチームが対戦した日米野球エキシビションゲーム。4回1死二、三塁、代打で打席に立ち、当時インディアンスのダン・オテロの直球を捉えた。打球は左中間に落ち、外野手同士がお見合いした間に後方へ。その間に、俊足を飛ばして一気にホーム生還した。珍しいランニングホームランでの「3ラン」だった。
「18年は支配下にはなったんですけど結局一軍には呼ばれなくて、秋に原(辰徳)監督が就任して初めての試合でパッと代打で使ってくれたんです。その時の状況とか点差とか関係なく、がむしゃらに振った結果があれでした。実際はただのポテンヒットですけどね。でも、足の速さはアピールできたかな、って」
MLB選抜チームには、ゴールドグラブ賞を9度獲得した名捕手のヤディアー・モリーナや、この年に19歳でメジャーデビューを果たしていたフアン・ソト、後にMLB史上初の「ホームラン40本、70盗塁」を達成することになるアクーニャJr.ら錚々たる顔ぶれが揃っていた。
「振り返るとすごいメンバーとやっていましたよね。でもあの時は僕、メジャーリーグってほとんど見ていなかったので、対戦相手はモリーナしか知らなかったんです。今思えばもったいないような気もしますけど、とにかく無我夢中で日々を過ごしていたということだと思います」
その足で大きなインパクトを残した松原だが、まだ現実は厳しかった。2019年は開幕一軍を逃し右脇腹を痛めるなど春先に離脱。結局、支配下に上がってから2年間一軍出場はゼロ。夢舞台への渇望の一方で、いつクビになるかもわからないという不安とも戦い続けていた。
「一軍でヒットを1本打つというのが目標でしたが、支配下になってから一軍が遠かった。危機感はずっとありました。いつ(クビを)切られるわからない状態ですから。毎年、秋が近づいてくると不安はありました。ただ、どんなに不安でも野球をやっていれば楽しかった。それが自分を支えていたし、だから頑張れたんだと思います」
「“同級生”で選抜チームを組んだら強いなぁって思う」
コロナ禍の2020年7月25日に一軍に初昇格してヤクルト戦で初打席初安打。代打や守備固めの起用に応えてスタメンを手繰り寄せ、「初打点」、「初猛打賞」、「初アーチ」と着実に結果を出し続けた。不安な思いの中でも体を鍛え、徹底的にバットを振り続けてきた成果だった。翌21年には一軍で135試合に出場し、打率.274、12本塁打、15盗塁。秋には球団歴代2位となる27試合連続安打も記録した。
「あの時は積極的に行けていましたし、自分の中でいいものを掴んだという感じがありました。それにあの1年半の間、運が良かったという部分もあるんです。助っ人の外国人選手って外野手が多いので、1枠、2枠埋まっちゃうこともあるんですが、あの2年間はなぜか全員外国人選手が途中で帰ってしまって(笑)。そういう運も持っていました」